ヘロディアス登場



あればかり御覧なされてはなりませぬ。あなたはいつもいつもあれを見つめてばかりおられますよ。

ワイルド『サロメ』より

ヘロデ王、王妃ヘロディアス、及び廷臣たちが月の見えるテラスへ出てきます。
ヘロデは月の中に酒に酔ったようなまる裸の女を見出しますが、
ヘロディアスにはただの月にしか見えていません。

ビアズリー描く尊大な物腰のヘロディアスは
彼が描いた皇妃メッサリーナやヴィーナスを思わせます。
王妃を先導するワイルドの顔をした道化は『サロメ』の脚本を抱えています。
小姓は右手に仮面を持っていますが、
この仮面はビアズリーの作品中にしばしば登場するものです。

『ヘロディアス登場』の挿絵は局部を露わにした小姓の姿が
検閲に引っかかったため、修正を余儀なくされました。
ビアズリーはその部分に大きなイチジクの葉を書き添えて修正しましたが、
逆に局部の存在が強調される結果となっています。



back|next