黒いケープ



あれはいかにも変な様子をしている。琥珀の眼をした小さな王女のようだ。軽羅の雲越しに小さな王女のように微笑んでいる。

ワイルド『サロメ』より

上は若いシリア人ナラボの台詞で、
彼は「小さな王女」のような月を見上げています。

『黒いケープ』はワイルドの戯曲の場面とはほぼ無関係の独立した作品です。
サロメの黒い衣裳は紀元前後のユダヤの王女としてはもちろんのこと、
19世紀のモードとしても大変斬新なデザインです。

背景その他の要素を一切排し、
黒の面と必要最小限の線で構成された量感豊かな表現は、
「黒」という色の持つ魅力が最大限に生かされたものだと思います。



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