プラド美術館展
 
 
 

2006年8月24日大阪市立美術館で開催のプラド美術館展を見に行きました。
今回の展覧会は大阪市立美術館開館70周年記念に開催されたもので、
西日本初のプラド美術館展とのことです。
展示作品の多くが日本初公開の作品で構成されていました。

1.スペイン絵画の黄金時代―宮廷と教会、静物―
16世紀〜17世紀のスペイン絵画で構成されていました。
エル・グレコ、リベーラ、スルバラン、ベラスケス、ムリーリョといった
スペイン・バロックを代表する画家たちの作品が一同に会していました。

エル・グレコ 十字架を抱くキリスト
十字架を荷いゴルゴタの丘へ向かうキリストの姿を描いた作品です。
寒色を中心とした色調とキリストの姿だけを浮かび上がらせる構成に
グレコの描き出そうとした神秘性を感じ取ることが出来ます。
キリストの光輪が四角に描かれているのは、
ギリシア・イコンの伝統によるものです。

ベラスケス ヴィラ・メディチの庭園、ローマ
ベラスケスがイタリアに滞在していたときに描かれた風景画です。
当時スペインでは風景画というジャンルは確立していませんでしたので
小品ですがこの作品は画期的なものといえます。

マルティネス・デル・マーソ 皇妃マルガリータ・デ・アウストリア
ベラスケスの肖像画で名高いマルガリータ王女の15歳の姿です。
この作品は父フェリペ4世の死によってスペインに里帰りしたときに描かれ
喪服を身に着けています。
以前図版でこの作品を見たときにはあまり感銘を受けなかったのですが、
実際の作品を見てみると、
質感の豊かさと皇妃の表情の繊細さを十分感じることの出来る作品でした。
マーソはベラスケスの娘婿で、宮廷画家として活躍しました。

ムリーリョ エル・エスコリアルの無原罪の御宿り
ムリーリョは数多くの「無原罪の御宿り」を描いていますが、
この作品のマリアほど愛らしく描かれたマリアはありません。
白い服は純潔を意味し、青いマントは信仰を意味しています。
そしてプットーの捧げ持つ百合と薔薇はマリアを象徴する花です。
図版で見ていたときから好きな作品の一つだったのですが、
実際の作品を見て色彩の美しさ、つややかさ、柔らかな質感に魅せられてしまいました。

ムリーリョ 貝殻の子供たち
今回の展覧会のチラシやポスターになっている作品です。
ムリーリョは愛らしい子供を描くことに巧みで、
風俗画にも子供を描いた優れた作品が数多くあります。
この作品の幼児イエスはとても愛らしいのですが、
やはり神の子らしく威厳を備えた表情をしています。

2.16-17世紀のイタリア絵画―肖像、神話から宗教へ―
ティツィアーノ、ヴェロネーゼ、ルカ・ジョルダーノなど
ルネサンスからバロック期にかけてのイタリア絵画で構成されていました。

ティツィアーノ ヴィーナスとオルガン奏者
豊麗なヴィーナスがアモール(クピド)を伴い音楽を聴きながらくつろいでいます。
音楽は官能的な愛の歓びを象徴するもので、ヴィーナスにふさわしいものです。

ティツィアーノ サロメ
健康的な若い娘の姿をしたサロメです。

グイド・レーニ クレオパトラ
毒蛇に自らの胸を噛ませ自殺するクレオパトラの姿です。
レーニは何点もクレオパトラを描いています。

3.フランドル・フランス・オランダ絵画―バロックの躍動と豊饒―
ルーベンス、ファン・ダイク、プッサン、クロード・ロランなどの作品で構成されています。

ルーベンス フォルトゥーナ(運命)
通常フォルトゥーナは目隠しをして運命の車輪を回す姿で表されますが、
ルーベンスは不安定な球に乗る女性の姿で表現しています。
どちらかといえば暗いイメージのフォルトゥーナですが、
みずみずしい肉体と生き生きとした表情のルーベンスのフォルトゥーナからは
豊かな生命力を感じ取れます。

4.18世紀の宮廷絵画―雅なるロココ―
18世紀スペインの宮廷画家をはじめ、
ティエポロ、ブーシェといったロココ時代を代表する画家の作品が展示されていました。

ルイス・メレンデス ボデゴン:風景の中の西瓜と林檎
「ボデゴン」とは「台所画」の意味で、スペインで独自の発達を遂げたジャンルです。
台所で調理をする情景を描いたものや、食器や食物を描いたものなど様々です。
普通寓意的には「果物」はこの世の無常を表しますが
このきれいに割れた西瓜からは儚さよりも旺盛な生命力を感じます。

5.ゴヤ―近代絵画への序章―
ゴヤ初期のタペストリー下絵、宮廷肖像画、「黒い絵」まで
7点の作品でゴヤの画業を凝縮しています。

ゴヤ ビリャフランカ侯爵夫人マリア・トマサ・デ・パラフォクス
侯爵夫人を夫である侯爵の肖像を描く画家として描いています。
意志の強そうな眼と毅然とした態度が印象に残りました。
 


| Back | Index | Next |