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知られざる ベルギー象徴派
 
 
 

2005年6月17日尾道市立美術館に「知られざる ベルギー象徴派」展を見に行きました。
Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されていた「ベルギー象徴派展」の巡回展です。
 
内容は東京と同じですが展示構成が少し異なっていたようです。
 
 
第一展示室…グザヴィエ・メルリを中心とした構成でした。
会場に入ってまず目に入ってきたのがメルリの「美の理想たる神をその身に宿し、そしてその神に従えるものは幸いなり」でした。
そして楽しみにしていた作品のひとつの「時の円舞曲」もそのそばにありました。
いずれも考えていたよりも小さい作品だと思いました。
私は97年に高知県立美術館で開催された「ベルギー象徴主義の巨匠展」で
メルリの「舞踏」という作品を見たのですが、それはかなり大きい作品(88×188cm)だったので
図版で見ていたときには「時の円舞曲」もそのくらいの大きさだと思っていたのです。
「時の円舞曲」は翼をつけ鎌を持った「時の翁」を娘たち(時の精でしょうか)が
取り囲み輪舞するという作品です。
時というものは移ろうものであるという「無常」をあらわした作品なのではと思います。
メルリの人物像は彫刻的な印象を受けます。それは寓意的な作品だけではなく
伝統的な生活を守る素朴な人々を描いた作品でも同様です。
 
 
第二展示室…レオン・フレデリックを中心とした構成でした。
フレデリックの大作「聖三位一体」は97年にも見ていたので二度目の対面でした。
聖三位一体では通常聖霊は鳩として表されますが
フレデリックは少女の姿の天使で表現しています。
この天使は愛らしいのですが、地面の蛇もリアルに描かれています。
フレデリックの画風は一言で言うと「濃い」ので、流れる犠牲の血などは目を背けたくなるようです。
しかし風景画があったのですが、これは別人の作品のように淡い色合いで描かれていました。
この展示室にトーロップの「二人の女」もありました。
ジャワ生まれのオランダ人であるトーロップの描く人物はどこかオリエンタルで神秘的です。
この女たちも人間の女ではなく何かの精霊のように思えます。
人物の髪と額装が一体化しているのが興味を引きます。
 
 
第三展示室…フェリシアン・ロップスを中心とした構成でした。
フェリシアン・ロップスのリトグラフ集「魔性の女たち」「悪魔のような女たち」のほか
代表作「娼婦政治家」などが展示されていました。
世紀末象徴主義者にとって「愛と死」すなわち「エロスとタナトス」は最も重要なテーマですが
そのテーマを露骨かつグロテスクな形で表しているのがロップスの作品群です。
個人的には好きな作品ではありませんが、
どうしてここまでエロを追求したのかということには興味があります。
 
 
第四展示室…スピリアールト、アンソールを中心とした構成でした。
スピリアールトの作品を見るのは初めてですが、この展覧会の中では異色という感じを受けました。
モダンというか私の持つ「世紀末」のイメージとは異なっています。
アンソールは小品中心ですが、様々な方が「ウォーリーをさがせ」みたいだと言っていた作品は
「オステンドの海水浴場」のことだなとすぐにわかりました。
太陽まで笑っているのがユーモラスです。
この展示室にクノップフの「グレゴワール・ル・ロワと共に―わが心は過去に涙す」もありました。
この作品は私の好きなクノップフ作品のひとつでブリュージュの街を背景に鏡に口づけする女性の姿が描かれています。
鏡と向き合う女性は自らの過去を懐かしんでいるのでしょうか?
それとも過去と決別しようとしているのでしょうか?
この作品と対面するのは三度目でしたが、実に印象的な作品です。
 
 
第五展示室…クノップフ、デルヴィルを中心とした構成(ここがメイン?)でした。
いよいよ今回一番楽しみにしていた「蒼い翼」と対面です。
この作品は全体はピンク系の色と白で青は「眠り」の神ヒュプノスの翼とその前に置かれた布だけです。
ですがその青は鮮やかに目に焼き付けられます。
青はクノップフが最も好んだ色であり、
彼は「眠りはわれわれの人生の中で最も完全なもの」と語っていたといわれます。
そんなクノップフにとって「蒼い翼」は重要な位置を占めていたのではないでしょうか。
「アクレイジア」「ブリトマート」の対幅は、英国の詩人スペンサーの「妖精の女王」に題材をとったものです。
官能美あふれるアクレイジアと男装の麗人ブリトマートは一見対照的ですが
どちらもいわゆる「宿命の女:famme fatale」です。
ブリュージュの風景画も何点かありました。
誰もいない、生命の息吹を感じさせない、まさに「死都」としてのブリュージュを描いています。
これらの作品を見続けていると幻想の街をさまようことになるのではという気になります。
 
デルヴィルの「栄華を司る天使」の天使は、頭や顔の表情が東方世界の天人を思わせます。
そして「死せるオルフェウス」の緑がかった青の世界の幻想美にただただ浸りました。
オルフェウスの竪琴を飾る宝石の赤がまた印象的でした。
どちらかというとデルヴィルの画風は苦手なのですが、この「死せるオルフェウス」は好きです。
前に一度見たことがあるのですが、もう一度見てよかったと思える作品です。
 
 
第六展示室…ドグーヌ・ド・ヌンクを中心とした構成でした。
ドグーヌ・ド・ヌンクの「謎めいた森」は白を基調とした作品で、私としては意外に感じました。
彼の画風は青を基調とした夕闇の世界を描くというイメージが強かったからです。
しかし「夜の効果」は典型的なド・ヌンク調でした。
 
この展覧会は、ベルギー象徴主義を概観できる充実した内容の展覧会でした。
こういった展覧会によって世紀末象徴主義に関心を持つ人が増えればいいと思います。
 
 


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