2005年5月21日に兵庫県立美術館へ「ドレスデン国立美術館展―世界の鏡」を見に行きました。
兵庫県立美術館―芸術の館は神戸東部新都心(HAT神戸)の一角にあります。
駅からはボードウォークのような歩道橋を通って5分ほどでたどり着きます。
初めて建物を目にしたときその大きさに驚きました。
最初のセクションは数学物理学サロンに集められた地球儀や天球儀、
コンパスや定規といったものでした。
当時の実用品であったものですが、どれも精巧な細工が為されていて美しいものでした。
次はオスマン・トルコの剣や装飾品、
その影響を受けてヨーロッパで作られた工芸品の展示でした。
イスラム文様の細密さにヨーロッパにはない美を見出したのでしょう。
 
3番目はイタリア美術なのですが、ここではティツィアーノ「白いドレスの女性の肖像」が目を引きます。
女性の肌の質感、薔薇色の頬、こちらを見つめるまなざしなどが印象的です。
他はあまり有名な絵画作品は展示されていなかったのですが、
カナレットのヴェネツィア景観画(ヴェドゥータ)が多く出品されていました。
 
4番目はザクセンのアウグスト強王に関する文物の展示です。
「ローズカットダイヤモンド装身具一式」の煌きにはため息が出ます。
アウグスト強王はフランスのルイ14世を手本とした絶対王政を敷きました。
フランス宮廷画家シルヴェストルによるアウグスト強王の肖像画が目立ちました。
 
5番目は中国、日本の磁器や漆器とそれを模して作られたヨーロッパの作品を比較して展示したコーナーです。
現在ではマイセンといえば洋皿やティーセット、ロココスタイルの磁器人形が有名ですが、
もともとマイセン窯は中国や日本の磁器を再現するために開発されたものです。
したがって初期のマイセンは中国磁器や日本の伊万里などのデザインを真似て作られたものが多いです。
それらを比較展示しているので、とても見ごたえのあるコーナーになっていました。
そして、伊万里の壷(5個一組)がマントルピースを模した場所に展示されていましたが、
あの壷であれば豪壮なバロック宮殿にも負けない存在感を放つだろうなと思うような壷でした。
 
いよいよオランダ絵画のセクションです。
最初に目に飛び込んでくるのがレンブラント「ガニュメデスの誘拐」です。
ギリシア神話の一場面を描いた作品ですが、通常妙齢の美少年として表されるガニュメデスを、
レンブラントは泣き叫び失禁する赤ん坊として描いています。
この作品は洗浄の結果左下に人物が描かれていたことが分かり、
そのポーズからこの人物はガニュメデスの母親ではないかといわれています。
エークハウト「天国の梯子についてのヤコブの夢」は、
ふんわりとした柔らかい雰囲気の画面に美しい天使や愛らしいプットーが描かれ、
展示室に入ったときにまず目に入った作品でした。
とうとうフェルメール「窓辺で手紙を読む女」と対面するときが来ました。
始め見たときに案外小さい作品だと思いました。
この作品はフェルメール作品としては大型の部類に入るのですが、
私はもっと大きな作品のように思っていたのです。
初期の作品のためか、
フェルメール独自の滲み出るような光の表現や色彩はまだなりを潜めているようです。
しかし、ガラスに映る人物の顔や、髪の毛の一筋一筋などの描写力
そして300年以上のときを経てなおつややかな色彩を保っているということには驚きます。
 
最後はドイツロマン主義のセクションです。
はじめにドイツロマン主義絵画に影響を与えたロイスダールの風景画が展示されていました。
そしてドイツロマン主義を代表するフリードリヒの
「雪中の石塚」 「エルベ渓谷の眺め」
「月を眺める二人の男」の3点がありました。
フリードリヒの空の色の表現はとても巧みだと思います。
特に「雪中の石塚」のかすかに薄紅がかった空の色がとても印象に残っています。
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