アーサー・ヒューズ マリアナ


庭の塀から石を投げて届くあたりに、
  黒々とした水のよどむ水門が眠り、
その上にはたくさんの、まるくて小さな、
  群れなす沼苔が這っていた。
すぐ近くではポプラの木が絶えず揺れ、
  その樹皮はこぶだらけで、葉の色は銀緑。
  見渡すかぎり ほかに木とてなく
坦々と広がる荒野に薄暮が迫っていた。
     乙女はただ「わたしの人生は侘しいわ。
      あの人が来ないから」と言った。
     乙女は言った、「寂しくて、寂しくてしようがない。
      もういっそ死んでしまいたい!」

そして月が空低く懸かり、
  ヒューヒュー鳴る風が吹くときはいつも、
白いカーテンのあちこちに、
  乙女は物影が激しくゆらめくのを見た。
しかし月がいよいよ低く傾き、
  吹き荒れる風の、己が住処にこもるとき、
  ポプラの影が乙女の顔を横切って
ベッドの上に差し込むのだった。
     乙女はただ「今宵は侘しいわ。
      あの人が来ないから」と言った。
     乙女は言った、「寂しくて、寂しくてしようがない。
      もういっそ死んでしまいたい!」


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