ひもすがら夢見るような館の中では、
  扉の蝶つがいはキーキーきしみ、
蒼蠅は窓ガラスでぶんぶんうなり、ねずみは
  崩れかかった羽目板のうしろでチューチュー鳴き、
裂け目からチロチロ顔をのぞかせた。
  昔馴染みの顔がドアを通してぼんやり光り、
  昔馴染みの足取りが二階を歩み、
昔馴染みの声が外から乙女を呼んだ。
    乙女はただ「わたしの人生は侘しいわ。
     あの人が来ないから」と言った。
    乙女は言った、「寂しくて、寂しくてしようがない。
     もういっそ死んでしまいたい!」

屋根の上では雀の囀り、
  遅れた時計の刻む音、そして
言い寄る風を遠ざけるように
  ポプラが応える音、これらすべてが乙女の気持を
動転させた。だが、乙女の一番忌み嫌ったそのときは
  たくさんのほこりを浮き立たせる日の光が
  部屋に差し込むとき、そして一日の太陽が
西の端に沈もうとするときだった。
    そのとき乙女は言った、「わたしはとても侘しいわ。
     あの人はもう来ないでしょうから」
    乙女は泣いた、「わたしは寂しい、寂しい。
     ああ神様、いっそ死んでしまいたい!」



ロセッティ マリアナ



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