ルーヴル美術館展
 
 
 

2006年10月12日、ルーヴル美術館展―古代ギリシア芸術・神々の遺産―(京都市美術館)を見ました。
この展覧会は古代ギリシアの彫刻・陶芸を中心とした展示で、
西洋文明の源流を探るといった趣です。

第1章 クラシック時代のアテネ
都市国家アテネの歴史をたどる構成となっていました。
 歴史的プロローグ
 アテネの創設神話
 アテネのアクロポリス
 郊外の墓地

トゥキュディデス、デモステネス、アレクサンドロス大王の肖像彫刻(ローマ時代の模刻)
第4代アテネ王エリクトニオスの誕生にまつわる物語の台座浮き彫りや
アテネの守護神アテナ・パルテノス像
様々な墓碑や陶器・装身具が展示されていました。


第2章 古代ギリシアの生活
 理想の市民:戦争と教育
 居留外国人と職人階級
 女性の世界
 古代ギリシアの子どもの生活

この展覧会で興味を引いたのは古代ギリシアの女性や子どもについての展示です。
古代ギリシア世界は男性社会で、
一般の女性は家庭の中で家事にいそしみ、
買い物すらも男性の仕事でした。
彫刻などに表されている女性の姿はほとんどが女神やニンフで、
人間の女性が表される場合でもヘタイラと呼ばれた遊女が中心です。
そんな中でヴェールをかぶった慎ましやかな女性像は
当時の一般女性の姿を彷彿とさせるものでした。

またギリシア世界においては「子ども」の姿が表現されることは稀でした。
墓碑に表された少年少女の姿は
古代ギリシアの子どもの姿を伝える貴重なものであると同時に
当時の乳幼児の死亡率の高さをも表しています。


第3章 古代ギリシアの競争精神
 古代ギリシアのスポーツ
 詩と饗宴
 ギリシア演劇

いずれも現代のスポーツ・演劇の原点となったものです。
運動競技者の均整の取れた肉体はそれ以後の理想の肉体美となりました。

また当時の演劇には仮面が用いられ、様々な仮面も展示されていました。
演劇に関する展示で印象に残ったのが
『アリストファネスとソフォクレスの二重肖像』です。
喜劇作家アリストファネスと悲劇作家ソフォクレスが
ローマの扉の神ヤヌスのような姿で表されています。
まさに悲劇と喜劇は表裏一体の存在であることを表しているかのようです。


第4章 神々と宗教
 プロローグ
 ギリシアの神々小事典
 アフロディテ

ヘルメス、ディオニュソス、ニケ、アポロン、アルテミスなど
ギリシア神話でおなじみの神々の姿を刻んだ彫刻やテラコッタが展示されています。
中でもアフロディテ(ヴィーナス)はうずくまる姿、水からあがる姿など
様々な姿で表現されています。

『アルルのヴィーナス』は17世紀の発見時には両手を失っていましたが、
ルイ14世によってヴェルサイユ宮殿に移された際、両手を補われ、
更に林檎と鏡が追加されました。
後にこの過度な修復が問題となりますが、
この修復そのものが作品の一つの歴史とみなされたため、
現在も林檎と鏡を持つ優美な姿をとどめています。


京都市美術館の重厚な空間は古代彫刻の美しさを引き立てるものだと思います。
そのような空間でこれら古代の美をじっくりと鑑賞できたことは
実に貴重な体験だったと思います。
 


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