銀閣―本堂・東求堂・弄清亭特別公開
 
 
 

銀閣寺(慈恩寺)では毎年春と秋に本堂・東求堂及び弄清亭の特別公開が行われます。

案内係の説明を聞きながら、まず本堂中央の本尊を拝みます。
ここの襖絵は与謝蕪村による『飲中八仙図』です。
杖をついたり、弟子におぶわれたり、寄りかかったりしている八人の仙人の姿が
生き生きとした筆致で描かれています。

その次に見た西の間の襖絵も同じく蕪村による『棕櫚に叭叭鳥図』です。
叭叭鳥は一見カラスのように見えますが、
中国にいる九官鳥に似た物まねのできる鳥だとのことです。
棕櫚の木も当時の日本では珍しいものだったそうで、
この部屋の襖絵は南国的な異国情緒あふれるものとなっています。
また空を飛ぶ叭叭鳥が何羽も描かれていますが、
これは一羽の叭叭鳥が飛び立って空を行く様を描いているとのことで、
コマ送りのフィルムを見ているかのような効果をあげています。

東の間の襖絵は池大雅による『琴棋書画図』です。
琴・囲碁(棋)・書・画は中国において文人の教養として必須のものでした。
風光明媚な屋外で囲碁をしたり、琴を奏でたり、
書をたしなんだり、水墨画を眺めたりする姿が伸びやかに描かれています。
池大雅は釣りを大変好んだとのことで、
この絵にも釣りをする文人の後姿が描きこまれ、
大雅自身の姿を現したものであるとも言われています。

本堂拝観の後、庭園を眺めながら東求堂へ向かいます。
東求堂は銀閣(観音殿)と並ぶ現存する創建当初の建造物です。
堂内の四畳半の書院同仁斎は、最古の書院造とされており、
現在の和室のつくりの原点となった場所でもあります。
余分な装飾を一切省いたシンプルな空間には
贅を尽くすこととは対極の美意識を感じます。

この後見学した弄清亭は香道をたしなむための香座敷として建てられたもので、
平成になって改築されました。
その際奥田元宋による障壁画が収められました。

最初の部屋には萌黄色の背景に白牡丹の老木と紅色の牡丹の若木を描いた
『薫園清韻(くんえんせいいん)』があります。
この作品は福島県須賀川市にある牡丹園の牡丹を描いたもので、
白牡丹の壮麗さとアクセントとなっている若木の牡丹の赤のコントラストが見事です。

次の部屋の障壁画は『流水無限』です。
青森県奥入瀬渓谷に訪れた遅い春の様子を描いています。
床の間から違い棚、襖をいっぱいに使って風景をパノラマ的に描き出しています。
水しぶきを上げて流れる渓流はやがて緩やかなものに変わっていき、
岸辺には山吹や桜も咲いています。
この作品は川の流れを人生に見立て、
岸辺から川を見つめる鳥は画家自身の姿であるとも言われています。

最後の部屋の障壁画は『湖畔秋耀』です。
これは特定の場所を描いたものではなく、画家の想像による風景とのことです。
全体に紅葉と太陽のオレンジがかった赤が支配的な画面ですが、
太陽は夕日ではなく朝日を表しています。
 


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