ああ、再びベアトリチェは見えない、
 そして私はかくも悲痛にあるを
 思いかえす度ごとに、
 悲しみの記憶は。
 わが心を悲愁をもって包む。
 私は言った、「魂よお前はなぜ出て行かないか
 すでにこうもあじきない世に
 更にお前がもたらそうとする苦痛は
 激しい恐怖で私をもの思いに沈める。」
 私は甘ましいなつかしい憩であるかの如く
 死を呼びもとめて、
 誰かの死をうらやむばかりの
 深い愛をもって「死よ私に来い」という。
一つの哀音が
 わが嘆息のなかに集まり
 死を絶えず呼び求める。
 わがベアトリチェが
 死の残酷にとらえられたとき
 彼にすべてわが願いが向かっていった。
 そは、彼女の美の悦びが
 われらの目から去って
 大いなる霊的美となり、
 その愛の光明は、天上にひろがり、
 天使を祝福し、
 その深き高き叡智を
 驚かすほどに貴いから
カンツォーネ第五(天に祝福されたベアトリチェをなつかしむ)

 
 
 
 
 
ロセッティ
ダンテの夢
1856 48.7×66.2cm
テイト・ギャラリー

page 1 | page 2