かくも長くも愛のとりことなり
 その支配力に慣れてきたので、
 かつては酷薄に思われたものも、
 いまは心の宿のやさしい客となった。
 さればわが力が失せて
 諸々の霊がのがれ出るとき、
 わが弱い魂は甚だ甘美を感じ、
 そのため私の顔の色は変わった。
 かくて愛は全く私を主宰したので、
 霊たちの嘆息に言葉を与え、
 嘆息はベアトリチェを呼びつつ出て行き
 わがために更に大なる福祉を乞うた。
 彼女が私を見るとき常にかくのごとく
 そは人の信じられぬほどの歓喜である。
カンツォーネ断片(愛に全く支配されて)

 
 
 
 
 
ロセッティ
ダンテの愛
1860〜(未完) 74.9×81.3cm
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