ビアズリーとワイルド『サロメ』



サロメ巻末のカットです。
道化と悪魔がサロメを不思議な形の棺に納めようとしています。
側にあるのは巨大な化粧パフのようです。

ワイルドは『サロメ』において
モローの絵のようなビザンティン風の神秘的世界を表現しようとしていました。
彼ははじめビアズリーの作り出す世界に大いに期待していましたが、
ビアズリーの風刺的・性的要素を多分に含んだ戯画的描写や
浮世絵や版画から影響を受けた「日本風」な表現に対して
次第に嫌悪感を示すようになりました。

しかしながら現在ではワイルド『サロメ』とビアズリーの名は
切っても切れない関係になっています。
『サロメ』に登場する様々な倒錯的な愛の形、頽廃的な雰囲気は
ビアズリーの巧みな線描と白黒のコントラストによって
誰の目にも明らかなものになったといえるでしょう。



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