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芸術都市パリの100年展 ルノワール、セザンヌ、ユトリロの生きた街 1830−1930
 
 
 

2008年7月12日〜9月7日 ひろしま美術館

この展覧会は日仏交流150周年を記念して開催され、
1830年から1930年までの100年間に制作された絵画・彫刻・写真などを通して
パリが「芸術の都」として最も輝いた時代を紹介するものでした。

作品はルーヴル美術館、オルセー美術館などパリ市内の12の美術館と
モーリス・ドニ美術館(サン=ジェルマン=アン=レイ)
マルロー美術館(ル・アーブル)
ファーブル美術館(モンペリエ)の3つの美術館から出展されました。

1.パリ、古きものと新しきもの ―理想の都市づくり
1850年代から60年代にかけてナポレオン3世の命を受けたオスマンの大改造によって、
パリは近代都市に生まれ変わりました。
1889年のパリ万博の時にはエッフェル塔が登場し、
1900年の万博の時には現在美術館となっているオルセー駅、グラン・パレ、プティ・パレが造られ、
1914年にはモンマルトルの丘の上にサクレ=クール聖堂が完成しました。
セーヌ河岸、公園、街角など変わり行くパリの風景を画家は画面にとどめています。
またエッフェル塔建設の様子の写真も大変興味深いものです。

2.パリの市民生活の哀歓
19世紀後半のパリの都市開発とメディアの発達は市民生活を大きく変化させました。
モンマルトルはカフェやダンスホールが出来て若者たちの遊び場、芸術家の集合地となり、
ブーローニュの森は競馬場、動物園、植物園などのある市民の憩いの場となって、
それらの情景は画家たちの新しい画題となりました。
また写真家も市場や祭りにおける庶民の生き生きとした姿を撮影しています。

3.パリジャンとパリジェンヌ ―男と女のドラマI 絵画・写真
ユゴー『ノートルダム・ド・パリ』に題材をとった作品を始めとした文学的作品、
文学者や芸術家を初めとする紳士たちの肖像、
貴婦人、女優、令嬢たちの肖像、画家の自画像、各界著名人の肖像写真など
人間ドラマを感じさせる作品の数々が紹介されています。

4.パリジャンとパリジェンヌ ―男と女のドラマII 彫刻
ロダン、ブールデル、マイヨールの作品が紹介されています。
それまでの彫刻が信仰の対象であったり、
記念碑であったりすることがほとんどであったのに対し、
彼らの彫刻はまず「作品」であり、自己表現の手段であったことが作品から伝わってきます。

5.パリから見た田園へのあこがれ
物質文明の進展とともに都会では失われた「麗しき田園」への憧れが都市住民の間で強くなってきました。
この時代公共建築の装飾画も「自然の中の人間の営み」をテーマに取り上げるようになっていきます。
美しい自然の風景やそこで繰り広げられる人々の営みを描いた作品や
装飾下絵等が紹介されています。

絵画作品からだけではなく、写真や彫刻の数々からもパリの黄金時代に触れることが出来ました。


モネ テュイルリー 1876 マルモッタン美術館
ルーヴル美術館の西からコンコルド広場まで広がるテュイルリー公園には
1871年パリ・コミューンによって焼失するまで、かつての王宮がありました。
この作品では公園として復興したテュイルリーの様子を描いています。
実際の画面を見ると木々の緑の美しさが間近に迫ってきます。

ジョルジュ・ダンテュ トロカデロ公園、サイ、雪の印象 1933 カルナヴァレ美術館
一面の雪景色の中、巨大なサイのブロンズ像が目を引く作品で、
ほとんどモノトーンに近い画面の中で唯一色彩があるのが泉の水の薄青です。
誰一人いない雪の公園と南の動物を象った巨像からは
現実の風景を描いたものでありながら、どこか超現実的な雰囲気を感じます。
作者はパリ生まれの風景画家で、日本の桜の風景も描いています。

オーギュス・ルルー 秋のリュクサンブール公園にて カルナヴァレ美術館
夕暮れの空の薄紅色と、紅葉した木々の茜色、花々の赤や黄色の美しい作品です。

ユトリロ コタン小路 1910-11頃 ポンピドゥーセンター
白漆喰の壁のアパルトマンが立ち並ぶ狭い小路は
最もパリらしい風景であると同時に、異次元の世界でもあるような感じがします。
ユトリロが描いたのは「花の都・芸術の都」ではなく、
彼の心の中の風景としてのパリであるように思えます。

デュフィ 家と庭 1915 パリ市立近代美術館
青と緑で描かれた中に一輪の薔薇の薄紅色が印象に残る作品です。

ファンタン=ラトゥール サテュロス ユゴー詩集『諸世紀の伝説』から 1902-03
 ヴィクトル・ユゴー記念館
ファンタン=ラトゥールは「薔薇の画家」として知られていますが、
『ニーベルンゲンの指輪』などの物語の一場面を描いた作品も多く残しています。
この作品では美しいヴィーナスを中央にギリシアの神々が
薄もやの彼方に集っているような幻想的な筆致で描かれています。

ウジェーヌ・アモリ=デュヴァル アリス・オジィの肖像 1852 カルナヴァレ美術館
アングルの弟子であった画家の作品で、
モデルは19世紀半ばに人気絶頂だった女優です。
正面を見据える眼差しは彼女の一流の女優としての気概を感じさせます。
紫のドレスと黒のレースのショールの質感の美しさも必見です。

モーリス・ドニ 墓地の聖女 1894 モーリス・ドニ美術館
シンプルなフォルムと静謐な雰囲気がドニらしい作品です。
なだらかな曲線で描かれた聖女たちや天使が実に優美です。

アンドレ・ボーシャン 花束 1927 マイヨール美術館
荒涼とした岩山を背景に色とりどりの花々が生けられた巨大な花瓶が置かれています。
花そのものは現実のものですが、どこか非現実の世界を思わせる作品です。


この展覧会には五点のモロー作品が出展されていました。
主に19世紀中期から20世紀初頭にかけての「パリ」を描いた作品を集めた展覧会にあって、
非現実の世界を描くモローの作品は異質なものであるように思えます。
しかし、これらの作品も確かに19世紀のパリに生きたモローが描いたという点で
「芸術の都」としてのパリの一面を表すものなのだと思います。

レダ 1865頃
画集などでもよく見かける作品です。
捧げ物を持つアモールやレダを祝福するようなポーズの白鳥(ユピテル)など
人間の女性であるレダを神格化するための儀式が執り行われているかのようです。
レダは多くのモロー作品の登場人物と同じく中性的な姿で描かれています。

レダ 制作年不詳
こちらは愛を交わす美女と白鳥という典型的な「レダ」です。
レダも女性らしい肉感的な姿で表現されています。
いわゆる「モローらしさ」は希薄ですが、とても魅力的な作品です。

妖精とグリフォン
未完成の作品ですが、モローが描こうとした神秘の世界の様子が伝わってきます。
妖精がまるで大理石の彫像のようで、
これから『ピグマリオン』のガラテイアのように生命を吹き込まれるのではと思わされます。

デリラ 1890頃
モロー晩年の作品です。
ゆったりと腰掛け、不敵な眼差しで嫣然と微笑む姿はまさに「ファム・ファタル」そのものです。
一般にモローの描く女性像は乳白色の肌が多いのですが、
この褐色の肌のデリラは彼女が「オリエントの女」であることを実感させます。

 制作年不詳
詩人に霊感を与える天使はモローが好んで描いたテーマです。
モローの描く詩人は両性具有的な美青年として表現されることが多いのですが、
この作品では長い髪と艶やかな肢体を持つ女性として表されています。
堂々たる様子を見せる彼女は「詩人」というよりも「生命の母」という雰囲気です。

 
 


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