日仏交流150周年記念 イタリア美術とナポレオン
 
 
 

2008年6月4日〜7月7日 愛媛県美術館

フランス領コルシカ島アジャクシオ市のフェッシュ美術館所蔵のイタリア美術及びナポレオン関連の絵画・彫刻・工芸約80点からなる展覧会でした。

フェッシュ美術館の基幹をなすのは、ナポレオン1世の母方の叔父ジョゼフ・フェッシュ枢機卿によるコレクションです。

第1章 光と闇のドラマ―17世紀宗教画の世界
ルカ・ジョルダーノ、マッティア・プレーティ、ベルニーニなど
17世紀バロックの宗教画(1点だけ歴史画有)によって構成されています。
ボッティチェリとベッリーニも便宜上ここに入れられています。
(ルネサンス期の作品はこの2点のみでした)
バロック絵画のイメージというと「華麗」という感じがしますが、
今回展示されていた作品の多くは色合い・画面はむしろ地味で、
光と闇のコントラストによる宗教的「激情」を強く感じさせる作品が多いと思いました。

第2章 日常の世界をみつめて―17世紀世俗画の世界
17世紀に入ると肖像画をはじめ、風景画・風俗画・静物画などの
世俗的主題も数多く描かれるようになります。
ここで印象に残ったのは静物画ですが、
北方の静物画と比較するとどことなく絢爛な印象を受けました。

第3章 軽やかに流麗に―18世紀イタリア絵画の世界
18世紀になると優美で雅やかなロココ様式が全盛となります。
ロココ絵画というとフランス絵画がまず思い浮かびますが、
肖像画や宮廷風俗、神話などを描くことの多いフランスと異なり
イタリアでは宗教画や景観画(ヴェドゥータ)が多く描かれました。
ロココ様式で描かれた優雅な聖人たちの姿はどこか異教の神々を思わせます。

第4章 ナポレオンとボナパルト一族
フランソワ・ジェラールによる『戴冠式のナポレオン1世』をはじめ
ナポレオンの母、妹、姪、甥など、ナポレオン一族関連の作品が展示されていました。
ミニアチュールによる肖像画やブロンズ小像、メダルなども展示されていました。

フェッシュ美術館所蔵のコルシカ風景画家
19世紀後半から20世紀初頭のコルシカの風景を描いた作品が紹介されていました。
バルビゾン派から印象派、エコール・ド・パリに重なる時代の作品ですが、
地中海の島で育まれたこれらの作品からは
フランス本土で描かれた作品とはかなり異なる独特の空気が醸し出されています。


主な作品
ボッティチェリ『聖母子と天使』
ボッティチェリがフィリッポ・リッピ門下で修行していた時代の作品とされています。
聖母マリアの額を広くし複雑に結い上げた髪型は当時のフィレンツェで流行したものです。
当時の貴婦人さながらの姿の聖母と量感ある肉体の幼子、そして幼子を支える天使の姿は
リッピの代表作『聖母子と二天使』に通じるものがあります。
ボッティチェリの天使といえば『マニフィカトの聖母』などに描かれた
少女漫画の主人公もかくやとばかりの美少年を思い浮かべますが、
この作品では素朴で愛らしい姿に描かれています。

ジョヴァンニ・ベッリーニ『聖母子』
ベッリーニはヴェネツィアのルネサンス絵画を確立した画家として知られています。
聖母子像はベッリーニが多く描いた画題で、
美しい田園風景のもと聖母子を描いたものもあります。
こちらの作品は金地の背景や聖母の衣裳など東方のイコンの影響を色濃く残していますが、
細やかな情愛を感じさせる表情や柔らかそうな肌の風合いなど
ルネサンスならではの表現も見られます。

ルカ・ジョルダーノ『聖セバスティアヌスの殉教』
イタリア・バロックの画家の作品です。
『聖セバスティアヌスの殉教』は多くの画家によって描かれていますが
この作品では聖人に刺さった矢の数は少なく、血も描かれていません。
それでもセバスティアヌスの苦悶が非常に伝わってくる作品です。
暗闇に浮かび上がる反自然的な色合いの肉体からは
彼がすでに俗世の人間ではなく神秘的な存在であることが伝わってくるようです。

フェリックス・ジーム『コンスタンティノープルの景観』
景観図(ヴェドゥータ)は18世紀のヴェネツィアにて非常に流行したものです。
多くはヴェネツィアの景観を描いたものですが、
この作品に描かれているのはコンスタンティノープル(イスタンブール)です。
モスクのドームやミナレットが描かれている場所を物語っていますが、
それよりも船や海、何より大気の存在感の大きな作品です。

フランチェスコ・ノレッティ『トルコ絨毯と壁布のある静物』
17世紀には静物画が絵画の一ジャンルとして確立され数多く描かれました。
この作品は画面の右半分を占める赤い壁布と左下のトルコ絨毯の重厚さが印象に残ります。
実際の作品を見るとまるで本物のトルコ絨毯をはめ込んでいるように見えました。

 
 


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