5    死せるサッフォー
更新日時:
2005/08/19
神々しい女は死んでいた。
黒く波打つ影のような長い髪を広げ、永遠に目を閉じ、
サッフォーの亡骸はやすらかに、
岬に近い断崖の下に横たわっていた。
 
霜のように輝きながら、
さざなみのように震えながら、静かな月が昇り、
神々の娘が象牙の竪琴を抱いて眠る
すきとおった水に、その光線が射し込んだ。
 
遠くの岩の足元で、雪のように白い大きな鴎たちが、
月光に輝き、蛾のように飛び交い、
それから虚しい影の波のように消えてしまった。
 
鴎は死に惹きつけられたのだ。そこでは幻のように、
大きな一羽の海鳥が、この生ける詩に魅せられた亡霊のように、
青白い翼をひろげて空を舞っている、
ジャン・ロラン「燃える影」
 
 
モロー サッフォーの死
1872-76頃 28.5×23.5cm
サン・ロー美術館



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