6    花のうたを聴きながら
更新日時:
2005/08/19
静かなるわが妹(いもと)、君見れば、想(おもい)すゞろぐ。
朽葉色に晩秋(おそあき)の夢深き君が額に、
天人の瞳なす空色の君がまなこに、
憧るゝわが胸は、苔古りし花苑の奥、
淡白き吹上の水のごと、空へ走りぬ。
 
その空は時雨月、清らなる色に曇りて、
時節(おりふし)のきはみなき鬱憂は池に映ろひ
落葉(らくよう)の薄黄なる憂悶(わずらい)を風の散らせば、
いざよひの池水に、いと冷やき綾は乱れて、
ながながし梔子(くちなし)の光さす入日たゆたふ。
マラルメ「嗟嘆(といき)」
上田 敏 訳
 
クノップフ ステファヌ・マラルメの詩
1892 21×10.5cm 個人蔵



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