絵画と衣裳 美の名品展
 
 
 

丸紅コレクション 絵画と衣裳 美の名品展
〜ボッティチェリ「美しきシモネッタ」・淀君の辻が花小袖〜


丸紅コレクションは時代衣裳など染色分野の所蔵品と
日本の洋画・西洋絵画の二つの分野で構成されています。
通常は非公開のこれらの名品が一堂に会した展覧会でした。


まず会場に入ると「衣裳」の展示があります。
江戸〜昭和初期にかけて作られた能衣裳・小袖・打掛・振袖など
どれも見事なものばかりです。

江戸時代の小袖などは、
通常私たちが身につける「和服」のイメージとは全く異なり、
アバンギャルドな匂いさえ漂うようです。

今回の「衣裳」の中でも最も貴重なものが
桃山時代の「辻が花小袖裂」ですが、
復元された「辻が花小袖」の大胆なデザインは
現代においても十分斬新さを感じます。

今回展示されていたもので私が一番気に入ったのは
兎模様の産着です。
擬人化されたウサギたちの表情やしぐさがとても愛らしく、
思わず欲しくなってしまいました。


「絵画」部門は日本の洋画と西洋絵画で構成されています。

ルドン『花瓶の花』(正確な題名を忘れました)
通常ルドンの「花」といえば、赤や青の色鮮やかな花を思い浮かべますが、
今回展示されていた作品は白と黄色の花で構成されたものでした。
しかし画面から醸し出される幻想的な雰囲気は
まさにルドンの造りだす小宇宙そのものでした。

キスリング『ミモザ』
ミモザの花の黄色がまず目に飛び込んできて、とても印象的な作品でした。
私がこれまでに見たことのあるキスリングの作品はほとんど人物画だったので、
彼の意外な側面を覗くことができたような思いです。

コロー『ヴィル・ダヴレーのあずまや』
いわゆる「典型的な」コローの風景画よりも明るい色調の作品です。
銀灰色に煙るような質感で描かれたコローの風景画は
私の大変好むところなのですが、
緑豊かな森と青い空で彩られた風景もまた美しいものです。

ボッティチェリ『美しきシモネッタ』
日本国内に所蔵されている唯一のボッティチェリ作品で
今回はこの作品を見るために、この展覧会に足を運んだようなものです。
ボッティチェリ得意の流麗な線描で
髪の毛の一筋、ドレスの襞の一本まで丁寧に描かれています。
それと同時に美しい金髪、陶磁器のような肌、重厚な質感の赤い衣裳など
彼が優れた色彩画家でもあることを感じさせてくれます。
全体に暖色系でまとめられた画面の中、
髪をまとめる布と腕に巻かれた布の青が
全体を引き締める効果をあげています。
 
 


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