2    夕の諧調
更新日時:
2005/08/19
ゆふされば 今 花々は 梢に揺れて
香炉のやうに 花の香が 風に薫じて、
音と 馨(かおり)と たそがれの空に 渦巻く。
憂鬱なワルツよ、 ものうい眩暈(くるめき)よ。
 
香炉のやうに 花の香が 風に薫じて、
悩ましい心さながら ヴィオロン 顫(ふる)へ、
憂鬱なワルツよ ものうい眩暈よ。
空は 悲しく美しく 祭壇のやう。
 
悩ましい心さながら ヴィオロン 顫へ、
大きな黒い無を憎む 優しい心。
空は 悲しく美しく 祭壇のやう。
落日は 凝るその血の中に 溺れた。
 
大きな黒い無を憎む 優しい心は、
輝く過去の ありとあらゆる名残を 集める。
落日は 凝るその血の中に溺れた・・・・・・
君の思出 わが胸に 聖体盒の燦(かがや)くごとく。
ボードレール「夕の諧調」
 
 
モロー 夕べ
1887 39×24cm クレメンス=ゼルス美術館



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