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フェルメール展「光の天才画家とデルフトの巨匠たち」
 
 
 

2008年8月2日〜12月14日 東京都美術館

この展覧会では7点のフェルメール作品を始めとして、
フェルメールと同時代に活躍したデルフトの画家たちの作品が紹介されました。

展覧会の構成は
●フェルメール以前のデルフトの画家
●フェルメールの作品
●フェルメール以後のデルフトの画家 のようになっていました。

最初に展示されていたのはデルフトの景観図や教会内の景観図です。
教会内の景観図は17世紀オランダで独自の発展を遂げた分野で
一見本物の教会そっくりに描かれていますが、
遠近法の操作や不要なものを構図から外すことによって
実際よりもより広々とした空間を作り出しています。
個人的に気になったのはいずれの作品にも教会内を走り回る犬が描かれていることです。
当時は犬も自由に教会へ入ることが出来たのかと思うと
どことなく微笑ましい気分になります。

デルフトの景観図といえばフェルメールも描いていますが、
他のデルフトの画家たちもそれぞれの視点で景観図を描いています。
フェルメールの作品ほどではありませんが、
いずれも空の面積が大きく取られ、
オランダという国が低地にあって
スカイラインに山や丘がほとんど入ってくることがないということがよくわかります。

フェルメールより少し前にデルフトで活躍した画家がカレル・ファブリティウスです。
ファブリティウス 『自画像』
ファブリティウスはレンブラントの弟子の中でも最も才能ある人物の一人といわれます。
この作品もかつてはレンブラントのものと考えられていましたが、
現在ではファブリティウスの作品とされています。

ファブリティウス 『歩哨』
うなだれる姿の歩哨も印象的なのですが、
何より心に残るのが「忠実」を象徴する犬の姿です。
静かにたたずむ姿がどことなく昔懐かしい「ビクター犬」を思わせます。

ファブリティウス『楽器商のいるデルフトの眺望』
これは本の図版などでもよく見かける作品ですが、実物を見たのは初めてです。
もっと大きな作品を想像していたのですが、意外に小さな作品で驚きました。

ファブリティウスはデルフトで起こった火薬庫爆発事故で死亡し、
作品の多くもそのときに失われていますが、
残された数少ない作品はどれも質の高いものです。
今回ファブリティウスの作品をまとめて見る機会が出来て本当に良かったと思っています。

ピーテル・デ・ホーホ『訪問』
デ・ホーホはフェルメールとほぼ同時代にデルフトで活躍した画家です。
『訪問』も地図や絵画の掛けられた室内で談笑する男女というのは
フェルメールの多くの作品と共通するものですが、
フェルメールの作品がどちらかといえば構成や色彩を重視した「純粋絵画」という印象なのに対し、
デ・ホーホの作品は「人間ドラマを絵画化した」雰囲気がします。

ピーテル・デ・ホーホ『幼児に授乳する女性と子供と犬』
フェルメールの風俗画には子供は全く登場しませんが、
この作品を始めデ・ホーホの作品には数多くの子供が登場します。
「授乳」というきわめて人間的な姿を描いたところに
デ・ホーホが「人間」「生活」をどのような視点で見ていたのかということが
なんとなく伝わってくるように思えます。


今回のフェルメール展では7点のフェルメール作品が出展されました。
当初の予定では『絵画芸術』(ウィーン美術史美術館)も展示されることになっていましたが、
作品保護のため展示中止となりました。
『絵画芸術』は以前の展覧会で見たことがあったのですが、
もう一度見てみたいと思っていた作品だったので、その点は残念です。

『マリアとマルタの家のキリスト』
フェルメール初期の宗教画で、
カラヴァッジョを初めとするイタリア・バロックの影響を受けた作品です。
後の風俗画と比較すると人物が画面いっぱいに描かれ、
背景も曖昧な表現になっています。
色彩の美しさに後のフェルメール絵画の片鱗を感じます。

『ディアナとニンフたち』
フェルメールの描いた神話画で現存する唯一のものであるとされていますが、
フェルメール作品ではないと考えている研究者もいます。
かつて背景は青空になっていましたが、
修復によりもとの黒っぽい色に戻されています。

『小路』
一度実物を見てみたかった作品の一つです。
道端で遊ぶ子供や家の中で裁縫(編み物?)をする女性など
当時の庶民の日常生活が営まれている空間でありながら、
なんとなく異世界を思わせる不思議な雰囲気を感じます。

『ワイングラスを持つ娘』

フェルメールの風俗画は複数の人物が描かれていても
あまり「人間ドラマ」を感じないものが多いのですが、
この作品に登場する人物は非常に人間的に思えます。
娘の赤い衣裳、青いテーブルクロス、市松模様の床など
色彩豊かで目に楽しい作品です。

『リュートを調弦する女』
こちらは2000年に大阪で開催されたフェルメール展でも展示された作品です。
『ワイングラスを持つ娘』とは対照的にほとんど色彩を感じさせず
窓から差し込むわずかな光によって陰影で表現された画面という印象です。
女が身につけているガウンの黄色が画面のアクセントとなっています。
この作品を見ていると画面からリュートの音色が聞こえてきそうな気がします。

『手紙を書く婦人と召使い』
当初の展示予定にはなかった特別出展作品です。
フェルメールは他にも「手紙を書く」女性像を描いていますが、
そちらに描かれた女性が画家や鑑賞者に視点を合わせているのに対し、
こちらに登場する女性は一心に手紙を書いており
日常を切り取ったスナップ写真のような雰囲気です。

『ヴァージナルの前に座る若い女』
近年「発見」されたフェルメール作品です。
単調な白壁だけの背景というのは他の作品と異なる印象ですが、
左側からかすかに差し込む光が窓の存在を暗示するようです。

会場の出口近くにはフェルメール全作品を実物大パネルで展示していました。
実際に全作品を一堂に集めることは不可能なので
こうした試みは面白いものだと思います。


フェルメール後のデルフトの画家の作品も展示されていましたが、
オランダ経済が不調になってきたこともあり、
同じような風俗画でもそれまでの作品とは微妙に雰囲気が変わってきています。
登場人物の身なりなどを見ても新しい時代が近づいてきていることを感じ取れます。

17世紀デルフトの画家たちの描くものには
煌びやかな作品はほとんどありませんが、
目を見張るものが数多くありました。
「神」のためではなく「人」のための芸術がそこにあるという印象です。

 
 


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