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シャロットの女
ジョン・アトキンソン・グリムショー 1878 82×122cm 個人蔵




シャロットの女
アーサー・ヒューズ 1872-73頃 95.5×160cm


 第四部
嵐ぶくみの東風に枝は曲がり、
薄黄色の森はいよいよ光芒を失っていた。
広い流れは堤にあたって、盛んに水しぶきをあげ、
雨雲低く垂れ込めた空からは雨が激しく注いでいた。
  多塔のお城キャメロットに。
姫は城を抜け出て、小舟が一艘
柳の木の下に繋がれているのを見つけた。
そのへさきに姫が書いた文字こそ
  「シャロットの姫」。

ほの暗く広がる川面を下り
さながら夢うつつにある豪胆な予言者のごとく、
己が身の上の不運を一切見据えて―
顔には表情ひとつとてなく
  姫はキャメロットのほうを見やった。
そして一日の暮れ果てるころ
姫は小舟の鎖を解き、身を横たえると、
幅広き流れにのってはるばると運ばれる、
  シャロットの姫君は。

雪のごとき純白の衣装をまとい横たわると
ひらひらと右や左に舞う衣―
木の葉も姫の上に軽やかに降りかかり―
夜の喧騒をかきわけて
  姫はキャメロットへ流れ着く。
くねくねと曲がり流れる小舟のへさきは
柳青める小山のそばや畑の間を進みゆき、
人々は姫のうたう臨終の歌を耳にした、
  シャロットの姫君の。

かなしげな、聖なる歌は
声高く、また声低く歌われた。
やがて姫の血はおもむろに凍えゆき、
両のまなこもすっかり暗黒の世界と化し、
  多塔のお城キャメロットへと向けられた。
流れに身を任せて漂う姫君が
水路ぎわの初めての家に着くその前に
姫は己が歌をうたいつつ息絶えた、
  シャロットの姫君は。

塔やバルコニーの下、
庭の塀や回廊のそばを、
姫はほのかに光る白装束の姿で流れすぎた、
聳える館の間を縫い、蒼ざめた使者の態で、
  粛々とキャメロット城に入ってきた。
人々は波止場に集い群がる、
騎士も市民も、領主も貴婦人も、
そして小舟のへさきに読めた名前こそ
  「シャロットの姫」。

この女は誰なるか?何が起こったのか?
明るく点された近くの城壁の中では
さんざめく王の宴もはたと止んだ。
恐怖のあまり十字を切る騎士たち、
  キャメロット城のすべての騎士たちが。
しかし、ラーンスロットは、しばし瞑想し、
言った。「この姫の顔の何という美しさ、
神よ、亡き姫の霊に慈悲を垂れたまえ、
  シャロットの姫君に」


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