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 8    「夜」と「眠り」
更新日時:
2005/08/19
       すみやかに西の波路を越えわたれ、
          「夜」の精霊(こころ)よ。
       昼のかげ、長く寂しき日もすがら、
       恐ろしく、はたいとほしく、汝(なれ)をする
       よろこびと恐怖(おそれ)の夢を汝(な)が織りし
       霧深きひんがしの洞(ほこら)より
          とく翔り来よ。
 
       つつめ、汝が姿を暗きマントルに、
          星織り入れし。
       「昼」の目を汝が髪をもて見えずなし、
       その疲れ果つるまでくちづけよ、
       さて、汝が麻酔の杖を触れながら、
       町と海、陸地の上にさすらへよ、―
          来よ、長く求めしものよ。
 
       われ起きて、あけぼのを見たる時、
          汝にこがれぬ。
       光、高く上り、露は乾きたる時、
       まひる日の、花に、葉に、重くよこたはる時、
       つかれたる「昼」は憩にむかふ時、
          汝にこがれぬ。
 
       汝が兄(いろせ)「死」は来り、叫びけるやう、
          われを求ぬるや
       うす皮の目をもてる汝が児「眠」は、
       正午(ひる)時の蜂のごとくに呟きぬ、
       われ汝のかたはらに寄り添ひなむか、
       われをし求むるやと―われは答へぬ、
          いな、汝ならじ。
 
       「死」は汝の死にし時にぞ来るべき、
          疾く、いとも疾く。―
       「眠」こそ汝が逝きし時にも来るらめ。
       いづれにもわれは願わじ、なつかしき
       「夜」よ、わが汝にもとむるさいわひを、―
       せまり来る汝が天がけり、速くあれ、
          疾く、来れ、疾く。
シェリー「『夜』に寄す」
竹友藻風 訳
 
 
 
イヴリン・ド・モーガン 夜と眠り
1878 107×157cm ロンドン ド・モーガン財団



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