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 21    Annabel Lee
更新日時:
2005/09/22
そのかみの、そのかみの昔語りよ
 海のほとりの王領に、
住みにけり、をとめ子ひとり。その御名の
アナベル・リーに、君、あるは知り給ふならむ。
そのをとめ、その女人(ひと)は、われを慕ひつ、われにまた
思われむねがひぞのみぞねがひつつ、ただ生きにけり。
 
われは童男(わらはべ)、そのひとは童女(めわらは)なりき、
 海のほとりのこの王領に、
しかはあれ、われらが愛は、世のつねの愛をば越えき、
 ―このふたり、われとわがアナベル・リーと。
み空なる翼もつ天使たちさへ
うらやみぬ、ねたむまでふたりが仲を。
 
さればこそ、そのかみのその昔、
 海のほとりのこの王領に、
雲間より風吹きおこり、ひややかに凍らせつつ、
 わが美しき(はしき)アナベル・リーを。
ゆかりある貴びと(あてびと)ら現はれ来り、
そのひとをわが身より遠く奪ひて、
海のほとりの王領の
 ある廟墓(おくつき)に葬りぬ。
空に住む天使らも、われらが幸のなかばさへ幸ならで、
 つひにねたみき、をとめ子とわれとふたりを。
ああ、さなり、そのゆゑに(海のほとりの王領の人すべてみな知るごとく)
雲間より夜半(よは)に風吹き、凍らせて
命絶ちにき、あはれわがアナベル・リーを。
 
しかはあれ、つよかりき、われらが愛は。
 ふたりより年うへの、年うへの
 さかしさのまされる際の愛よりも。
さればこそ、み空なる天使たちとて、
 海底の魔神たちとて、
いかで裂きへむ、わが魂(たま)をその魂ゆ、
 ―美しきアナベル・リーの。
 
さればこそ月かげのかがやくごとに、わが夢に、
 面影ぞ立つ、美しきアナベル・リーの。
さらにまた群星(むらぼし)ののぼりゆくごとに、われ感ず、
輝ける瞳(め)を―美しきアナベル・リーの。
さればこそ、よもすがら、いつもわが身は、
いとほしの、いとほしのわが命、わが花妻の傍(かたへ)近くに―
 海のほとりのかのひとの廟墓の中、
 波さやぐ海のほとりのかのひとのみ墓の中に
 
ポー 「アナベル・リー」
島田謹二 訳
 
 
ウォーターハウス 「宿命」
1900 68.5×55cm
バーンリー タウンリー・ホール美術館



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