ウォーターハウス ウンディーネ
1872 25.4×20.3cm 個人蔵 ウォーターハウスが描いた、最初の「水の女」が『ウンディーネ』です。 『ウンディーネ』はドイツ・ロマン主義の作家モット男爵が1812年に発表した小説です。 水の精ウンディーネは騎士フルトブラントと結婚し、人間として魂を得ますが、 幸せは長くは続かず夫に拒絶されてしまいます。 そのため精霊として自然界に帰らなければならなくなった彼女は 噴水から花嫁姿で現れ、自らの運命を嘆きながら 夫フルトブラントの命を口づけによって奪います。 フルトブラントは至福と苦悶に包まれて死んでいきます。 ウンディーネの流れるような金髪と体つきは 後ろの噴水とともに彼女の本質が「水」であることを表しています。 すなわち「あらゆる生命の根源」であり、 「生と死をめぐる時の流れの象徴」であり、 「受身であり、どんな器にも収まるが、最終的にはすべてを呑み込んでしまうもの」です。 そしてこの物語は世紀末に好まれた「愛と死」を主題としたものです。 ウンディーネの白い胸元は彼女の官能的魅力を具現化し 彼女が「死の口づけ」を振舞うにふさわしい存在であることを示しています。 哀しき「宿命の女」ウンディーネは 後のウォーターハウスの多くの作品に登場する女たちの原点といえるでしょう。 |