ヴィーナスの誕生

ボッティチェリ 1485頃 172.5×278.5cm
ウフィツィ美術館
 
「ヴィーナス」を描いた作品といってまず思いつくのはこの作品です。
この作品は古代ギリシアの画家アペレスの
「海から生まれたヴィーナス」を再現しようとしたものだといわれます。
ヴィーナスの左側には大地の精クロリスと
西風の神ゼフュロスがいて、
ヴィーナスに風と共に薔薇の花を送っています。
このヴィーナスは「天上のヴィーナス」と呼ばれています。




春(La Primavera)

ボッティチェリ 1482頃 203×314cm
ウフィツィ美術館
 
「ヴィーナスの誕生」と並ぶボッティチェリの代表作です。
中央にいるのがヴィーナスです。
この作品のヴィーナスは「地上のヴィーナス」と呼ばれます。
ヴィーナスの手前にいるのは花の女神フローラです。
フローラは元は大地の精クロリスでしたが、
西風の神ゼフュロスとの結婚によって
花の女神フローラとなりました。
フローラのすぐ側にいるのがクロリスですが、
すでにフローラに変身を始め、花を生み出しています。
フローラはたくさんの薔薇の花を抱えています。
この作品は結婚を祝うために描かれたといわれ、
花々も「愛」や「結婚」を象徴するものを集めています。




聖愛と俗愛

ティツィァーノ 1515頃 118×279cm
ボルゲーゼ美術館
 
この作品は貴族の結婚記念画として描かれたといわれます。
「純潔」を示す白いドレスや、「情熱」を示す赤いマント、
花嫁の花ミルテの髪飾りなど
様々な愛の寓意が描かれています。
しかしこの二人の女性については諸説あります。
「双子のヴィーナス」すなわち天上と地上のヴィーナスを表すとする説。
「愛」と「貞潔」の寓意像とする説。
花嫁である貴族の娘とヴィーナスとする説など様々です。
着衣の女性(地上のヴィーナス)は切花の薔薇を持ち、
「再生」を意味する石棺の前には薔薇の苗木が植えられています。
植えられた薔薇は永遠性を、切花の薔薇ははかない愛を表しています。
このふたつの薔薇によって天上の愛と地上の愛を対照的に表しています。




眠れるヴィーナス

ジョルジョーネ 1510−11頃 108.5×175cm
ドレスデン美術館
 
この作品はこれ以降数多く描かれることとなった
「横たわる裸婦」の原点となった作品です。
ヴィーナスは赤いクッションの上に横たわっていますが、
赤は愛と情熱を示す色であり、
彼女が愛と豊饒の女神ヴィーナスであることの証として描かれています。




風景の中のヴィーナス

クラーナハ 1529 38×25cm
ルーヴル美術館
 
クラーナハが描いた数多いヴィーナス像のひとつです。
それらの作品は「ヴィーナス」という名を借りて
官能的な裸婦像を描いたものです。
彼は通常ヴィーナス像を黒い背景の中に描いていますが、
この作品では美しい風景の中にヴィーナスを立たせています。
ジョルジョーネの描いた風景はイタリアの田園風景ですが、
この風景はドイツの森と湖(川?)のようです。