第一部
川の両岸に広がるは
果てしなく続く大麦やライ麦の畑、
それは広々とした平野となり、地平の彼方に続く。
畑中を走る一筋の道の通ずるは
  多塔のお城キャメロット。
人々はしげく行き交う、
咲き開く睡蓮を見やりながら
眼下なる島のまわりで、
  かのシャロットの島の。

〔吹く風に〕柳は白み、ポプラは震える。
そよ吹く風は川面にかげりを起こし、漣をたてる、
川の流れはとこしえに
川中の島をめぐりて
  キャメロットへと流れゆく。
灰色の城壁は四方(よも)をめぐり、灰色の塔は四本聳え、
見下ろすはただ一面の花畑、
静かなる小島に住むは
  シャロットの姫君ぞ。

柳青める川岸を
積荷重たき平底船
歩みののろい馬たちにひかれ、声もかけられず、
白帆張る小舟が一艘すいすいと滑るがごとく
  キャメロット目指し下り過ぎゆく。
だが、いったい何ぴとが姫の手を振るのを見たことか?
また窓辺に佇む姫の姿を見たことか?
国中に姫の名は知られているのか、
  シャロットの姫君は?

ただ麦刈る人びとぞのみ朝まだき頃より精を出し、
穂の出そろいし大麦畑にあって、
川辺から楽しくこだまする歌声に聞き入る。
その川は鮮やかにくねくねと曲がり、
  多塔のお城キャメロットへと流れゆく。
そして月影のさす頃 刈り人は疲れ果て
風わたる高地にて麦束を重ねつつ、
耳をすませて、囁く声は「あれこそ妖精の
  シャロットの姫君よ」。



ロセッティ シャロットの女



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