14    海の呪文
更新日時:
2005/08/19
海は 荒寥たる岸辺に 永久に囁いている、
巨大な波のうねりが 幾万の洞穴(ほらあな)を満たし、
魔神ヘカティの呪文は 遠い昔ながらの
ほの暗い響きを そこにとどめている。
いとも小さき貝殻が さきの天の風の
いましめを解かれたときに うち寄せられたところから
幾日も動こうとしないのは、しばしば
このような穏やかな気分でいるときに 見られるものだ。
おお! 目の玉を痛め 疲労させた人たちよ、
広大なる海に その目をそそいで慰めよ。
おお! 耳が激しい騒ぎで鳴り響き、
あるいは飽満するほどの音楽で うんざりする人たちよ、―
太古の洞穴の入口に坐り、海の妖精が合唱したかと
きみたちが胆(きも)をつぶすまで、瞑想せよ!
 
キーツ「海に」
 
 
 
ロセッティ 「海の呪文」
1875-77 115.5×93cm
フォッグ美術館



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