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つれなき美女
T
ああ どうしたことか、鎧の騎士よ、
色蒼ざめて ひとりさまよう。
浜すげは 湖上に枯れて、
また 小鳥の歌う 歌もない。
U
ああ どうしたことか、鎧の騎士よ、
かくも窶(やつ)れて かくも惨めに。
りすの穀倉(くら)は いっぱいで、
穫り入れも もうすんだ。
V
おまえの顔は 蒼ざめて、
苦悶と熱の 汗にぬれ、
おまえの頬は 色香もあせた薔薇の花、
うち萎れるのも はや間近。
W
牧場で出会った おとめごは、
あやしくも美しい―小妖精のようだった、
その髪ながく、足かろやかに、
瞳はいきいきと 燃えていた。
X
おとめごの頭(こうべ)に 花の環をのせ、
花の腕環に 花の帯しめ、
おとめごは 恋する目差し向けて、
あまい吐息を ついたものだ。
Y
おとめごを わが馬に乗せ、
あかず眺めて 日が暮れて
おとめごは 彼方に目を向けて、
妖精の歌を うたってた。
Z
おとめごは わたしに捜してくれた、
甘い香りの草の根と 野の蜂蜜と 甘露(マンナ)とを、
そして 不思議な言葉で たしかに言った―
<ほんに おまえが好きです>と。
[
おとめごは わたしを洞穴(ほこら)に連れてゆき、
泣いて 悲嘆にくれたので、
いきいきとした瞳を 閉ざしてやった
やさしい四つの接吻(くちづけ)で。
\
それから おとめごの歌が 眠りに誘い、
そこでわたしは 夢を見た―ああ! 忌まわしい!
いま見た夢を 夢見たとこは
しとね冷たい 丘だった
]
色蒼ざめた 王たちや 王子たちも、
みんなは叫んで こう言った―<つれなき美女が
おまえを とりこにしている>と。
XI
暗闇(やみ)に浮かんだ かれらの飢えた唇は
裂けんばかりに大きく開き おどろおどろに告げていた、
そして目覚めて 気がつくと、
しとね冷たい 丘だった。
XII
これがため わたしはここに仮寝を結び、
色蒼ざめて ひとり寂しくさまようが、
浜すげは 湖上に枯れて、
また 小鳥のうたう 歌もない。
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