高畠華宵は北宇和郡宇和島町(現在の宇和島市)の小間物屋の次男として生まれ、 幼少の頃から絵を描くことの好きでした。 少年時代に描いた地元の祭礼の様子の複製画も展示されていました。 今回の展示は『古城の春』『夏の日』など少年の日常を描いた作品や 『馬賊の唄』など少年を主人公にした小説の挿絵など、 いわゆる「大正ロマン」とは趣の異なる作品が多く、 華宵の描く世界の多様性を見ることが出来ました。 夏の装いの乙女たちの絵も展示されていて、 春とは一味違う涼やかな雰囲気でした。 華宵は上京し画家となってからは数回しか帰郷していません。 彼は「なつかしい少年の日の夢を、現実の故郷へ行って壊されることを怖れるからです」と述べています。 華宵にとって故郷は「遠くにありて思うもの」であり、 『古城の春』の遠くを見つめる少年や、 『夏の日』ののびのびと海で遊ぶ少年たちの姿は 華宵の心の中にだけ存在する故郷の姿を描き出したものだったのではないかと思います。 挿絵は雑誌の切り抜きや当時の雑誌や絵葉書などで展示されていました。 個人的にとても気になったのが『ナイル薔薇曲』という作品です。 エジプト風の頭巾を被った少年が大蛇と戦う様子が描かれていました。 当時の少年向け・少女向けの小説は現在ではほとんど読む機会がないのが残念です。 そして明治から大正にかけての宇和島の様子の写真展示もされていました。 レンガ造りの洋館の前に横付けされた小舟の写真を見て、 一瞬「ヴェネツィア?」と勘違いしてしまいました(笑) 現在の宇和島市は城の堀はもちろん、湾内も埋め立てられてしまい 街から海辺が大変遠くなってしまっているのですが、 当時は町のすぐ側に海があったということに感慨深いものがありました。  
 
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