Le Chant d'Amour〜愛の唄
 
 
 


バーン=ジョーンズ 愛の唄
1868-77 114×156cm
メトロポリタン美術館


この作品の題名や主題は妻ジョージアナから聞いたと思われる
古いブルターニュの民謡「ああ、われは知る愛の唄/悲喜こもごものその調べを」から
着想を得たものと考えられています。
オルガンを弾く若い女性の側にはふいごを操作する愛の擬人像が描かれています。
擬人像が眼を閉じているのは「愛は盲目」であることを示すためです。
そして赤い衣裳も「愛」を象徴するものです。

画面に描かれた花々も愛の悲喜こもごもを暗示するものです。
左下の赤いチューリップの花言葉は「愛の告白」
右よりの黄色いチューリップの花言葉は「希望のない恋」「実らぬ恋」
右端の紫のチューリップの花言葉は「永遠の愛情」「不滅の愛」
チューリップのほかに描かれている花はニオイアラセイトウで
その花言葉は「逆境にも変わらぬ誠」「愛情の絆」です。

古来「音楽」は官能を刺激することから「愛」を象徴するものとされ、
愛の物思いに耽る女性の姿はしばしば楽器を演奏する姿で描かれました。
バーン=ジョーンズの描く乙女はあまり感情をあらわにしてはいませんが、
周りに描きこまれた数々の象徴によって
彼女が思うのはまさしく「愛」であることが明らかとなっています。

『愛の唄』は愛の喜びと哀しみを華麗な色彩と流麗な線描で見事に描き出した作品です。