ふたりの母
 
 
 


セガンティーニ ふたりの母 1889


眠るわが子を抱く母と、藁の上に寝そべる子牛を見守る母牛という
「ふたり」の母を描いた作品です。

セガンティーニが「母性」をテーマにした作品としては
『生命の天使』や『悪しき母親たち』のような象徴主義の作品が著名ですが、
この作品は農家の日常生活が写実的に描かれたもので、
一見象徴的な意味合いはこめられていないように見えますが、
ランプに照らされた夜の小屋や幼子を抱く母
そして牛の存在はキリスト降誕図を思わせるモチーフであり、
この作品はある意味「宗教的」な作品であるといえます。

しかし『ふたりの母』からは特定の宗教を超えた「母性」の尊さを感じます。
日常の何気ない情景にこそ聖なるものが宿っていることを教えてくれているようです。