運命の車輪
 
 
 

『運命の車輪』は盟友ウィリアム・モリスの未完の叙事詩をテーマにして
制作される予定であった三部作(未完)の一つです。

「運命」の寓意像(フォルトゥーナ)は伝統的に目隠しをして車輪を回す女性として
表現されます。
車輪は人生・人間の儚さを象徴するものです。
彼女の回す車輪には3人の男性が縛り付けられています。
上から両足に鎖をつける奴隷、王冠と王杖を帯びる王、桂冠を被る詩人で、
身分の高低に係わりなく全ての人間は運命に支配されることを表しています。

彫刻的でたくましい人物像はミケランジェロを研究した結果であり、
運命の女神の姿もシスティーナ礼拝堂の天井に描かれた巫女の影響を
強く受けています。

この作品では運命の女神の姿が一際大きく描かれていますが、
これは中世の祭壇画に見られるように
作品の中で最も重要な人物は大きく表すという流儀に従ったものとされます。

フォルトゥーナは元来ローマの豊穣・多産の女神でした。
豊穣・多産は女性原理を体現するものといえます。
全ての人間の運命を支配する大いなる女性であるフォルトゥーナは
Famme Fataleと呼ぶのに最もふさわしい存在なのかもしれません。