『ボッカ・バチアータ』で装飾的なヴェネツィア様式を確立したロセッティは その後官能的な美女の半身像を数多く制作します。 「ヴェネツィア風」の華麗な作品は富裕な収集家たちによって大いに愛好されました。 青の閨房 1865 背景の染付タイルや小型の琴に日本趣味の影響が見られます。 この作品は特定の主題を表現したものではなく 豊かな赤い髪と白い肌を持つ美女と 青いタイルや花々で飾られた部屋が作り出す 調和(ハーモニー)そのものを視覚化したものといえます。 モンナ・ヴァンナ 1866 ロセッティの「ヴェネツィア様式」の美人像の中でも代表的なものです。 題名はダンテ『新生』の登場人物に由来していますが、 文学の登場人物を描いたものではなく、 画面の装飾性と理想の女性美をひたすら追求して描かれたものです。 ロセッティはこの作品を「ヴェネツィアのヴィーナス」とも呼んでいました。 豊かな髪、乳白色の肌、厚く赤い唇の いわば「ロセッティ印」(『ファム・ファタル 妖婦伝』より)の美女は 世紀末のファム・ファタルの原点になったといわれています。 これらの作品は世紀末象徴主義・アールヌーヴォーに影響を与え、 数多くの致命的な魔性を持った妖婦を産み出すもととなったのです。 |