モロー サッフォーの死 1870頃 こちらの作品は2005年に開催されたモロー展にも出展された作品です。 サッフォーは古代ギリシアの女性詩人ですが、 彼女にはファオンという青年に失恋して レウカディアの岩から身を投げたという伝説があります。 モローは岩の上に座るサッフォーや、岩から身を躍らせるサッフォー、 崖の下で永遠の眠りにつくサッフォーなど、 幾度となく「サッフォーの死」を題材にした作品を描いています。 私は最初このサッフォーを見たとき、 まるで飛天か菩薩のように感じました。 黒髪、伏せた瞳、豪華な宝冠など どこか東洋的な趣を感じます。 彼女は岩から身を投げたところなのですが、 あたかも羽衣を翻し、妙なる調べを奏でながら 天高く飛翔していくかのようにも見えます。 モローはサッフォーを「詩」を体現する存在であり、 神聖なるものと人間を媒介する巫女のような存在と位置づけました。 サッフォーのまとう豪華な衣裳は、 彼女の神聖さを表すためのものなのです。 |