上の作品は人物の頭部と手のみ彩色されていますが、 ロセッティはこの状態で額装して自宅の暖炉に飾っていたそうです。 そのため未完成作ではなく、 意図的にこの状態にしておいたものと思われます。 ロセッティ邸を訪れたコレクターがこの作品を是非にと所望したのですが、 彼がこの作品を手放すことを拒んだため、油彩による『白日夢』が制作されました。 (油彩のほうはこちらです。) 人物のポーズは同じですが、 緑を基調とした油彩画とほとんど白で支配されたパステル画では かなり異なる印象を受けます。 パステルによる作品のほうがより「白日夢」を現出したものという感じがします。 ロセッティはこの作品を生涯手放さず、 彼の死後『白日夢』はモデルとなったジェイン・モリスに遺贈されました。 このことからもロセッティのこの作品への深い思いが伺えます。 「白日夢」という言葉の響きからは、 まさに夢とも現ともつかない幻想の情景が思い浮かんできます。 ロセッティが手に入れたいと望んだ幻の姿を形にしたものが 『白日夢』であったのかもしれません。 |