花のうたを聴きながら
 
 
 

「花のうたを聴きながら」というのは、フェルナン・クノップフの素描「ステファヌ・マラルメの詩」の別名です。
私の最も好きなクノップフ作品です。
小手毬やかすみ草のような小さな花(多分白い花)に顔を寄せ、思いに耽る人物が描かれています。
本当に花々の歌声に聞き入っているかのように見えます。
彼には他にも「沈黙」や「香」のように瞑想的な作品が多く見られます。

クノップフはブリュージュの風景も多く描いていますが、現実の街ではなくどこか異世界の街を思わせる光景です。
このような風景画を見ると20世紀のシュールレアリスム絵画を連想します。

「私は自分だけの世界を創り出し、そこに遊ぶのです」とクノップフは好んで語ったそうです。
彼の作品に登場する人物も自分だけの世界の住人であり、
彼の描くブリュージュは現実のブリュージュの街ではなく、彼の創り出した幻想の街なのです。
そしてそれらの作品を見る者たちは、彼の創り出す夢想と静寂の世界へいざなわれるのです。