中世以来の数多くの絵画に天使は登場します。 神の言葉を伝えるためであったり、 人を導くためであったり、 人を癒すためだったり様々な目的をもって人間の前に現れます。 優しく美しいだけが天使の姿ではありません。 黙示録に登場する恐ろしい天使も存在します。 中世には天使は青年の姿で描かれていました。 それがルネサンス期に入ると中性的・女性的に描かれるようになってゆきます。 フラ・アンジェリコの描く妙齢の乙女のような大天使ガブリエルや ボッティチェリの描く少女のような美少年の天使 レオナルドの描く両性具有的な天使など 初期ルネサンスの時代から盛期ルネサンスの時代にかけて描かれた天使は 実に魅力的です。 マニエリスムからバロックの時代にかけて 天使はだんだんと幼い姿で描かれるようになってゆきます。 プットと呼ばれる有翼の幼童は元来ギリシア神話より派生したものですが、 それがキリスト教美術にも取り入れられるようになりました。 そのため天使の外見は低年齢化していくこととなったのです。 しかしその天使の幼児化は同時に天使の聖性を失う結果となっていたようです。 バロックからロココの美術においても天使の姿は数多く描かれていますが、 私はルネサンス時代の天使のほうに心惹かれます。 近代に入ると宗教美術は衰退し、 天使の姿はそれぞれの画家の表現の手段の一つとなります。 特に象徴主義の画家たちは天使の姿を様々な象徴として描いています。 |