22    サアヂの薔薇
更新日時:
2005/09/22
この朝(あした)君に薔薇(そうび)を捧げんと思ひたちしを、
摘みしはなむすべる帯にいとあまた挿み(はさみ)入るれば
張りつめし結び目これを抑ふるにすべなかりけり。
 
結び目は破れほどけぬ。薔薇の花、風のまにまに
飛び散らひ、海原めざしことごとく去つて還らず。
忽ちにうしほに泛び(うかび)漂いて、行手は知らね。
 
波、ために紅に染み、燃ゆるかと怪しまれけり。
今宵なほ、わが衣(きぬ)、あげて移り香をこめてぞくゆる……
吸ひ給へ、いざわが身より、芳はしき(かぐはしき)花の思い出
 
デボルド・ヴァルモール 「サアヂの薔薇」
斎藤磯雄 訳
サアヂ 13世紀ペルシア「薔薇園」の詩人サーディのこと。
 
 
 
 
ウォーターハウス 花束
1908頃 57 x 39.5 cm
Falmouth Art Gallery, Falmouth, Cornwall, England
 



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