ラファエロ 聖ミカエルと悪魔
1518 268×160cm
ルーヴル美術館
 
大天使ミカエルは多くの天使たちの中で唯一「聖ミカエル」の名で呼ばれています。
「ミカエル」という名前は「神に似た者」を意味し、神が一番最初に創った天使だともいわれています。

彼は旧約聖書においてはユダヤ民族の守護天使として「天使長」の名で呼ばれ、
ヨハネの黙示録では天の軍勢を率いて悪魔と戦っています。
上に掲げたラファエロの作品に見られるように、
ミカエルが悪魔もしくはその化身の龍と戦う姿が、多くの絵画作品で表されています。
 





ペルジーノ 聖ミカエル
1499頃 126.5×58cm
ロンドン ナショナル・ギャラリー
 
この作品のようにキリスト教美術においてミカエルは
甲冑に身を固め、武器を手に取る美青年の姿で表されます。

しかしイスラム教におけるミカエル(ミーカール)は
サフラン色の髪の毛を足まで伸ばし、その髪の毛一本一本に百万の目と口があり、
それぞれがしゃべり涙を流すという姿であるとされています。
 





メムリンク 三連祭壇画 最後の審判(部分)
1567-71 268×160cm
ポーランド Muzeum Narodowe
 
上の作品は「最後の審判」の一部です。
ミカエルは終末の日に人間の魂の善悪を計量し、天国行きか地獄行きかを決定する重要な役割を担っています。
すべての人間は天使の鳴らすラッパによって蘇り、審判を受けます。
良い魂(向かって左)が通常重いほうに描かれることが多く、この作品でもそのように描かれていますが、
良い魂が軽いほうに描かれる場合もあります。


325年のニカイア公会議で天使信仰がキリスト教の教義に採用されて以後
天使崇拝が盛んになってきましたが、中でもミカエル信仰は抜きん出ています。
ミカエルの名は山岳信仰と結びつき、彼が出現したとされる山は巡礼地となりました。
世界遺産に登録されているモン・サン・ミシェル(フランス語でミカエルの山)が有名です。
 



ムリリョ 聖ミカエル
1665-66 169×110cm
ウィーン美術史美術館