幸せの日よ、過ぎ行くな、
輝きわたる野面(のづら)から、
幸せの日よ、過ぎ行くな、
乙女が僕になびくまで。
西は薔薇色、
南も薔薇色、
あの娘(こ)の頬は薔薇の花。
あの娘の口も薔薇の花。
あの娘の口の端(は)から
うれしい「はい」が洩れるとき、
うれしいこの知らせを広めてくれ、
輝き過ぎる船また船に。
風の吹きゆく海の面(も)に、
あるいは静かな海の辺(へ)に、
うれしい知らせを伝えてくれ、
西空を真っ赤に染めて知らせてくれ。
赤い人が海の彼方の
赤杉の木立のそばで踊りだし、
西から東へ赤くせよ、
東から西まで赤くせよ、
西が東となりきるまで
西空一面に伝えてくれ。
西は薔薇色、
南も薔薇色、
あの娘の頬は薔薇の花。
あの娘の口も薔薇の花。
テニスン『モード』第一部より
|
||