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つれなき美女
 
 
 

ウォーターハウス つれなき美女

1893
112×81cm
ヘッセン州立美術館



ウィリアム・モリスは『つれなき美女』(La Belle Dame Sans Merci)を
「この詩こそ、まさにラファエル前派のすべての詩を生みだす芽生えとなった」と評しています。

「つれなき美女」は男を誘惑し死に至らしめる恐ろしい妖女ですが、
彼女は恋した騎士をもとの世界に戻す、善良な側面も併せ持っています。
冷酷非情な魔性の女であり、愛に殉じる純情な女でもある彼女は
まさに世紀末の「宿命の女」像の原点にふさわしいといえるでしょう。

ウォーターハウスの描く「つれなき美女」は一見可憐な乙女ですが、
彼女は騎士の首に髪を巻きつけ、結び目を作っています。
座る姿は『人魚』のスケッチを転用したものといわれています。
騎士の纏う鎧兜は男らしさの象徴であると同時に
男性の貞節の象徴でもあります。
この作品では、生きている人間のはずである騎士は生気に欠け、
彼岸の存在であるはずのつれなき美女のほうが生命力溢れて見えます。

ウォーターハウスにとって『つれなき美女』は
いわゆる「ウォーターハウス・ガール」と呼ばれる
愛らしく儚げな女性像の原点となりました。
その後『オフィーリア』『聖カエキリア』『ヒュラスとニンフたち』などの
代表作を描き出すこととなります。

「つれなき美女」は芸術家に啓示を与えるミューズという役割も果たしているのかもしれません。