魔性のヴィーナス(Venus Verticordia)

ロセッティ 1864-68 98×69.9cm
ボーンマス ラッセル=コーツ美術館
 
Verticordiaとは「人の心を変える」という意味で、
ロセッティは「ファム・ファタル」としてのヴィーナスを描きました。
左手に持つのは不和の女神エリスがよこし、
パリスの審判によってヴィーナスに贈られた林檎です。
右手に持つのは愛の矢で、
この矢で射られるとそのとき見た相手を愛するようになってしまいます。
ヴィーナスの周りを飛ぶ蝶は霊魂を象徴します。
これは愛の矢で射られた男の魂です。
手前の花はスイカズラで変わらぬ愛を表します。
背景はヴィーナスの花、薔薇です。
 
“かれは今安らいでいる
だが見よ、林檎を口に押しあてて
甘さも束の間、矢が心を貫けば
永久にさまよい続けるがさだめ”
ロセッティのソネットより




ヴィーナスの鏡

バーン=ジョーンズ 1870-76 120×200cm
リスボン カルースト・グルベンキアン財団
 
水鏡を見つめるヴィーナスと侍女たちを描いた作品です。
この作品は特定の主題を描いたものではないのですが、
「鏡」というのはヴィーナスの持物のひとつで
絵の中の人物がヴィーナスであることを示すために描かれます。




アフロディテ

モロー 1870頃 24.4×14.7cm
フォッグ美術館
 
モローは数多くの神話的主題を手がけていますが
ヴィーナスを描くことはあまりありませんでした。
この作品は物語的主題を持たず、裸婦を中心に描いているという点で
モローとしては異色の作品といえます。




ヴィーナスの誕生

ルドン 1912 個人蔵
 
ルドンは何点もの「ヴィーナスの誕生」を描いていますが、
いずれも貝の中にヴィーナスを描いています。
まるで貝の身のようなヴィーナスです。




愛の女神

セガンティーニ 1894-97
ミラノ 近代美術館
 
セガンティーニの描いた「異教の女神」です。
ゆったりとまどろむ姿はジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」の影響を受けたものです。