ボッティチェリ
ヴィーナス
1485頃 158×68.5cm
ベルリン絵画館
 
 
 
金星は地球のすぐ内側を周っている惑星で、
地球よりもやや小さいのですが、
太陽系の惑星の中では最も地球に近い質量を持つ星です。
金星の公転周期は225日なのですが、自転周期が243日なので
日の出から日没までのほうが1年よりも長い計算になります。
しかも他の惑星とは自転の向きが逆なので、
金星の地上では太陽は西から出て東に沈むことになります。

金星は地球よりも内側を公転しているため、明け方と夕方にしか見ることが出来ません。
地球から見ると太陽、月の次に明るい天体のため
夜明けに見えるものを「明けの明星」
日没後に見えるものを「宵の明星」と呼びました。
平安時代には「夕星(ゆうづつ)」と呼ばれ、
「枕草子」にも、すばるやひこぼしと並んで美しい星のひとつとしてあげられています。

金星はその美しい光から女性名を当てられることが多く、
メソポタミアで美と愛と豊饒の女神イシュタルの名をつけられて以来
ギリシアではアフロディテ、ローマではウェヌスと呼ばれました。
ウェヌスの英語読みがヴィーナスです。
ちなみに月の海や山に地名がつけられているように
金星の山や谷にも地名がつけられており、
その地名にはレダ、アルテミス、イシュタル、ラクシュミ、ギネヴィアなど
世界各地の神話や伝説に登場する女性の名前がつけられています。
惑星記号はヴィーナスの持物である手鏡を図案化したもので、♀のマークでおなじみです。

ヴィーナスは海の泡から生まれたとされていますが
彼女が最初に上陸したのは地中海のキプロス島もしくはキュテラ島とされています。
キュテラのフランス語読みがシテールで、
ヴァトー「シテール島の巡礼」は愛の女神の生誕地を訪れる恋人たちの姿を描いたものです。
ヴィーナスの持物は鏡のほかに白鳥や白い鳩、薔薇などがあります。
そして侍女の三美神や息子クピド(キューピッド:ギリシアではエロス)を伴った姿で表されることもよくあります。

ヴィーナスの姿は説話の中で表されるよりも理想の裸婦像として表現されることが多く、
「ミロのヴィーナス」を初めとする数々の女性裸体像が「ヴィーナス」と呼ばれています。
ジョルジョーネ以降「横たわるヴィーナス」の主題が生まれ
画家たちは「ヴィーナス」の名のもとに理想の女性美を追求していくこととなります。


今回の画像はボッティチェリ「ヴィーナス」です。
古代の美の復興と新たな美の創造の融合された美神の姿です。