大レンブラント展

2002年11月3日〜2003年1月13日 京都国立博物館

 

 
この展覧会は京都国立博物館とシュテーデル美術館(フランクフルト)の2館共同で企画・開催されました。

展示はすべて油彩の作品のみで構成されていました。

レンブラントを全体的に取り上げ、その絵画芸術の多様な側面を紹介するという内容でした。

ただし、展示作品すべてがレンブラントの真筆ではなく、レンブラント周辺の画家の作品も含まれていました。

 

 
展示構成と主な作品


1.画家としての出発

1626年から31年にかけての、主にライデンで制作した作品が展示されていました。

初期のレンブラントの作品は比較的明るい色彩で描かれています。


首当てをつけたレンブラントの肖像 1629頃 マウリッツハイス美術館

23歳のレンブラントの肖像です。ほぼ同じ構図の作品がニュルンベルク、ゲルマン国立美術館にあります。

この作品は長年レンブラントの真作と考えられていましたが、

調査の結果ニュルンベルクの作品が真作で、この作品はレンブラントのすぐ近くにいた人物によるものであることが明らかとなりました。



2.アムステルダムでの画業の確立

1631年から1641年にかけての、レンブラントが経済的に最も恵まれていた時期に制作された作品で構成されていました。

この頃は細密な描写による優れた肖像画を数多く制作しています。


目を潰されるサムソン 1636 シュテーデル美術館

旧約聖書・士師記に登場する怪力の男サムソンの物語が描かれています。

大画面(205×272cm)いっぱいに躍動感あふれる人物の描かれた「バロック的」な作品で、

当時のレンブラントの画業の充実振りをうかがわせます。



3.「夜警」以後

1642年から55年にかけて制作された作品で構成されていました。

レンブラントは「夜警」制作以後、経済的には転落の一途をたどります。

しかし画業はますます充実したものとなり、外国のコレクターから注文を受けることもありました。



左手前に幼子イエスを抱き上げる聖母マリア、右奥に大工仕事をする聖ヨセフが描かれています。

額縁とカーテンが「だまし絵」的に描かれていますが、これはバロック絵画特有の技法で

画面を舞台のように見せ、そこで展開されるドラマを覗き見たいと思わせる効果を挙げるためのものです。

画面中央の焚き火と猫が作品全体を暖かい雰囲気にしています。


机の前のティトゥス 1655 ボイマンス・ファン・ビューニンゲン美術館

机に向かい、右手にペンを持ち、左手からペン入れとインク壷をぶら下げた姿は「学者」「若い学生」の姿を表したものであり、

多くを学び、物事を深く考えなけらばならない若者を意味しています。

レンブラントは一人息子ティトゥスを繰り返し描いています。



4.破産と晩年

1659年から69年にかけての晩年の作品で構成されていました。

若い頃の硬質なタッチから、柔らかな表現に変化していることがよくわかります。


ユノー 1665頃

ローマの女神ユノーを描いた作品です。

画面いっぱいに真正面を向いて描かれた女神の姿は威厳に満ちています。