ボッティチェリ
春(ラ・プリマヴェーラ:部分)
1482頃
ウフィツィ美術館
 
 
 
水星は太陽系の惑星の中では最も小さく太陽に近い場所にあり、公転周期は88日です。
つまり水星では一年は(地球の感覚で言うと)たった88日しかないのです。
しかし自転周期は59日くらいなので、日の出から次の日の出までは59日×2=118日で、
水星では一日のほうが一年よりも長いのです。
見かけの明るさは−0.4等から5.5等まで変化しますが、
太陽の近くにあるため、日の出前もしくは日没後のわずかな時間しか見ることが出来ません。

水星は太陽の近くを回っているため天球上の運行が早く、
そのため俊足の神メルクリウス(マーキュリー)の名がつけられました。
メルクリウスはギリシアではヘルメスと呼ばれます。
彼は神々の使者で、通常神々の行くことの出来ない冥界へも行くことが出来ます。
そのためペルセフォネの迎えにもヘルメスが遣わされました。
また人類最初の女性パンドラを地上へ連れて行ったり、
アフロディテ、ヘラ、アテナの中で最も美しい女性を決めさせるために
羊飼いとなっていた王子パリスのもとへ黄金の林檎を持っていったのも彼です。

画像はボッティチェリ「春(ラ・プリマヴェーラ)」(部分)です。
この絵に見られるようにヘルメスは一対の翼のついた帽子(ペタソス)をかぶり
同じく翼のついたサンダルを履いています。
彼が手にしているのは蛇が巻きついた「ケリュケイオン」という魔法の杖で
ヘルメスのシンボルとされ、水星を表す惑星記号にも図案化されて使われています。
彼は詐術にも長けており、アポロンも彼にだまされたことがあります。
足の速さもあいまって泥棒や賭博の神としても知られることとなりました。
またヘルメスは商業の神でもあり、
ヘルメスの杖は商業学校の校章としても用いられます。
そして竪琴やアルファベットを発明したのもヘルメスだとされています。