てんびん座は“く”の字を逆にした形に並んだ三つの星が目印です。
一番天頂に近いβ星は珍しい緑色をした星です。
この星座は形から名づけられた星座ではなく、
古代、この付近に秋分点があったことから
昼と夜の時間の釣り合いが取れているという意味で名づけられました。
(現在秋分点はおとめ座にあります。)
それ以前はさそり座の一部とみなされており、
α星とβ星にはいずれもさそりの爪を意味する名前が今でもついています。

この天秤は正義の女神アストレイアのもので、
人間の罪の軽重を量るためのものです。

太古、黄金の時代と呼ばれた時、
地上は平和で人々と神々が共存共栄していました。
やがて銀の時代、青銅の時代になるにつれて、
地上に罪悪がはびこるようになり、人々は争いを始めるようになりました。
そして鉄の時代となると罪悪があふれ、とうとう戦争が始まってしまいます。
神々は人間を見捨て、次々と天上へ去っていきますが、
アストレイアだけは地上に残りました。
しかしいつまでも争いをやめることなく、
地上を血で染めて行く人間たちの姿に嘆き悲しんだ挙句
とうとうアストレイアも地上を去って天の星になったと伝えられます。

画像は17世紀フランスの画家、ローラン・ド・ラ・イールの
「抱擁する平和と正義」です。
「正義」は剣と天秤を持つ女性の姿で表され、
「平和」は武装を解いた男性の姿で表されています。