モロー
ユピテルとセメレー
1896 213×118cm
ギュスターヴ・モロー美術館
 
 
 
木星は太陽系最大の惑星で、直径は地球の11倍もあり、
その質量は木星以外のすべての惑星を合わせたものの2.5倍に及びます。
そして地球や金星などと異なり、水素などのガスによって組成されています。
この組成は太陽などの恒星と同じもので、
違いは恒星のように内部で核融合を起こしていないことだけです。
そのため「恒星になり損ねた星」とも呼ばれます。

木星の自転周期は約10時間で、これは太陽系の惑星の中では最も早いものです。
そのため遠心力で赤道方向に膨らんだ楕円形になっています。
公転周期は約12年です。

木星には数多くの衛星があり、現在63個の衛星が確認されています。
そのうち最も有名なものがガリレオ衛星と呼ばれる四つの衛星で、
木星の衛星の中でも群を抜いて大きく、
空の澄んだ場所でならば、視力の良い人は肉眼で見ることも可能です。
ガリレオによるこの発見は地動説の有力な証拠となりました。

木星は太陽・月・金星に次いで明るく見える星で、
その堂々たる輝きから、メソポタミアで主神マルドゥクの名を得て以来
ギリシアでゼウス、ローマでユピテルと各地の主神の名で呼ばれています。
ユピテルの英語読みがジュピターです。
惑星記号は天動説時代に第四惑星とされたことから
アラビア数字の4の字を図案化したものが用いられます。

ユピテルとは「天なる父」を意味します。
稲妻を操り、鷲を従え、高貴な威厳に満ちた姿をしているというのが本来のイメージなのですが、
様々な姿に変身しては多くの女神やニンフや人間の女性たちを誘惑して
数え切れないほどの子供をもうけているという多情な面も持ち合わせています。

ちなみに木星の衛星にはイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト(ガリレオ衛星)を初めとして
ゼウス(ユピテル)と関連のある神話上の人物の名前がつけられています。
イオには活火山があり、それは地球以外の太陽系の天体で唯一のものです。


画像はモロー「ユピテルとセメレー」です。
ユピテルの子を身ごもったテーバイ王女セメレーは
いつも人間の姿で彼女のもとを訪れていたユピテルに対し
一度だけ神の姿で来てほしいと頼みました。
その願いを聞き入れ、セメレーの前に本来の姿を現しますが、
彼女は稲妻によって焼き尽くされてしまいます。
メルクリウス(ヘルメス)はセメレーの胎内から赤子を救い出します。
その子供が後に酒の神バッカスとなりました。