パージファエ
 
 
 


モロー パージファエ 1876-80


クレタ王ミノスは
海神ポセイドンに海から現れた牡牛を犠牲として捧げる誓いをたてました。
しかし表れた牡牛があまりに立派であったため、
惜しくなった王は他の牛を犠牲としてしまいました。
その結果海神の呪いにより王妃パージファエは牡牛に恋をしてしまいます。
この思いを叶えようとパージファエは工人ダイダロスに青銅の牝牛を作らせ、
彼女はその中に身を潜めて思いを遂げます。
そうして生まれたのが半牛半人の怪物ミノタウロスです。

中央で青銅の牝牛の中に入るため衣を脱いでいるパージファエが
視線を向けているのは白い牡牛です。
パージファエの背後ではダイダロスが罪深い恋に加担したことを憂いています。

パージファエの物語はあまり絵画化されていませんが、
モローはこの主題に大変心惹かれていたようで、
晩年にもパージファエについて書き残しています。

大きな恥辱と憎悪と罪と不運を見つめるよう運命づけられた人間の内に、人はなんという怖れ、なんという憐み、なんという大きな悲しみの不意打ちを感じることだろう

モロー「夢を集める人」より


上にあげた作品は恋人アレクサンドリーヌ・デュルーに贈られたもので、
モローはこのほかにも『レダと白鳥』など官能的な主題を描いた作品を
恋人に贈っています。