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夜と星の列車
 
 
 

私の好きな絵画作品の一つに英国の画家ロバート・ヒューズの「夜と星の列車」があります。
ロバート・ヒューズは「オフィーリア」や「四月の恋」を描いた
アーサー・ヒューズの甥にあたり、
ウィリアム・ホルマン・ハントに師事しました。 この「夜と星の列車」は画家の最晩年の作品で、
当時としてはすでに「時代遅れ」となっていた文学的、幻想的な作品です。

私が最初にこの作品と出会ったのは、
洋書の古本市で購入した“ANGELS”というポストカードと小冊子がセットになった本に
掲載されていた図版の一つとしてです。
このポストカードセットには他にもロセッティ、バーン=ジョーンズ、
ペルジーノ、メムリンク、フラ・アンジェリコなどの天使作品も掲載されています。
このときはロバート・ヒューズという画家の名前も知りませんでしたが、
幻想的な光景と赤子を抱く天使の表情の美しさ、優しさに一目惚れでした。

青を基調として描かれた夜の光景のアクセントとなっているのが赤い罌粟の花です。
天使(夜:ニュクス)の手から罌粟の花は舞い散っています。
ロセッティ「ベアタ・ベアトリクス」に見られるように
麻薬の材料となる罌粟は「眠り」や「死」を象徴するもので、
この作品は死んだ幼子の魂が「夜」の天使に抱かれて天へ昇って行く姿を描いたものなのです。

「死」(タナトス)は「眠り」(ヒュプノス)の兄弟であり、共に「夜」(ニュクス)を母とする
とギリシア神話ではいわれていますが、
「夜と星の列車」の死んだ幼子の魂は「母」としての「夜」のふところで
安らかに眠っているのでしょう。
そして「母」は幼子の眠りを妨げないよう
小さな天使たちに静かにするよう口に指をあてているのです。
やがて目覚めた幼子は天使のひとりとなって
「母」とともに夜ごと空を駆け巡り、人々に静寂と眠りをもたらすのだと思います。