現在では長年連れ添った女性、アレクサンドリーヌ・デュルーの存在が知られているモローですが、 アレクサンドリーヌの存在が知られるようになる前は、 モローは同性愛者であるという説が有力に語られていました。 そのように考えられるようになったのは 彼の描く中性的・両性具有的人物像の影響が大きいようです。 上の『死せる詩人を運ぶケンタウロス』に描かれた詩人は男性ですが、 白い肌・細身の体など「女性的」な美しい姿をしています。 モローといえば妖艶な“Famme Fatale”(宿命の女)を描く画家といわれますが、 彼の描くサロメやヘレネといった女の顔立ちや体つきは どちらかといえば中性的といえます。 そしてガニュメデスやセバスティアヌスといった美少年や美青年は 両性具有的な美しさをたたえた姿で描かれ、 イアソンやオイディプスといった英雄すら、繊細な姿で描き出されています。 中性的な妖しさを放つ『宿命の女』と たおやかな美を持つ(このような言葉は無いのですが)『宿命の男』は モローの作り出す美の世界において対の存在であるように思えます。 |