舞踏―原始のエネルギー
 
 
 

「時の円舞曲」を最初図版で見たとき、もっと大きな作品を連想したのですが、
実際の作品を見てみると意外に小さな作品(47×73cm)で驚きました。

中央にいる鎌を持つ有翼の老人は「時の翁」と呼ばれる
「時」の寓意像です。
時の翁を取り囲んで若い女性たちが輪舞を踊っています。

「舞踏」は1997年に開催された「ベルギー象徴主義の巨匠展」に出展された作品です。
メルリという画家の名前は知っていたのですが、
はっきりと意識して作品を鑑賞したのはこのときが初めてでした。
この作品も等身大くらいのように思えますが、88×184cmの作品です。
しかし黄金の背景に逆光に照らされたように浮かび上がる
彫刻的な肉体を持った人物群像に圧倒されます。

「時の円舞曲」は円になって踊る女性たちの姿も優美で
常に移ろい続ける「時」の儚さを感じるのですが、
大地を踏み鳴らして力強い踊りを見せる「舞踏」からは
野性的というか原始のエネルギーを感じます。

クラシックバレエには空気の精(シルフ)や死霊(ウィリー)、白鳥のように
大地に繋ぎとめられた肉体を脱して天上を目指すというイメージがあるのですが、
19世紀末から20世紀初頭にかけて起こったモダンダンスには
肉体を賛美し母なる大地への回帰を目指すといった感じがします。

この「舞踏」という作品には、
声楽曲の題名ではないのですが「大地讃頌」という言葉がふさわしく思えます。